冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「……なんか、気持ちが切れちゃってさ」
「気持ちが……切れた?」
「うん。俺、将来弁護士になるんだって、今まで何の疑いもなく思ってたけどさ。それって、姉ちゃんを喜ばせたいって気持ちが、たぶん第一にあったんだ」
弓弦は照れくさそうに鼻の頭を掻き、それから手元の成績表に視線を落とす。
成績が大きく下がったことにショックを受けている様子はなく、なんだかホッとしているようにも見えた。
「姉ちゃんが出てったあと、びっくりするほど急に勉強意欲が失われて、そのことに初めて気づいた。だからこの結果は当然だと思う。もちろん、弁護士になることを完全にあきらめたわけじゃないし、いつか、俺たちみたいな家族を助けられる存在になれたらって気持ちは変わらない」
このところ、弓弦が精神的にどんどん大人になっていて驚くことばかりだ。
自分の考えをしっかり語りながらも、私を傷つけまいとする優しさを言葉の端々に滲ませる姿は、我が家がまだ平和だった頃の父によく似ている。
「でもそれまでに、何年かかるかわかんないじゃん? だったら、父さんのことは神馬さんに託した方がいいんじゃないかって思ったんだ。弟の俺にまで親切にしてくれるほど姉ちゃんを大切に想ってくれてる人で、しかも検事だ。俺の口からちゃんと、あの事件の裏側になにがあるのか調べてくださいって、お願いしたかった」
「弓弦……」