冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
弓弦の昼食にはお弁当を持たせる日もあるけれど、バタバタして間に合わなければお金を渡している。
決して贅沢はできない金額なのに、それを少しずつ節約して、私のために……。こんなサプライズ、感激するなと言う方が無理だ。
さっきまで、人並みにお洒落がしてみたいと思っていたところだったこともあり、弟の粋な計らいについ涙ぐんでしまう。
「……かわいい」
「え。まさか、泣いてる? 涙腺よわっ」
「うぅ、だってぇ……」
ごまかそうと笑顔を作るも、目尻から涙がこぼれてしまう。弓弦は困ったような顔になって、ネックレスの中央で控えめに輝いている、小さな花のモチーフを指さした。
「これ……花びらが四枚のやつを選んだのには理由があってさ。〝良縁〟って意味があるんだって」
「良縁?」
「そう。俺には困ったとき頼れる姉がいるけど、姉ちゃんの方は七つも年下の俺に頼ろうとはしないだろ。だから、姉ちゃんにも甘えられる相手いれば安心だなって」
たどたどしくもプレゼントを選んだ理由を語る弟に、目を瞬かせる。
そんなことまで考えてくれていたんだ。
年が離れているからなんとなく〝私が弓弦を守らなきゃ〟っていう思いが強かったけれど、思えば弓弦だってもう高校二年生。いつの間にこんなに成長していたんだろう。
「……まーた泣いてるし」
「いいでしょ。うれしいんだもん、泣かせてよ」
「まぁいいけど。ホント、自分の幸せについてももっと考えろよな。もちろん、父さんの再審請求をあきらめるって意味じゃなくて、両方叶えようぜってこと」