冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

【あまり長く書くとどんどん悲しくなってきちゃうので、そろそろ終わりにしますね。どうかお体に気をつけて、お仕事頑張ってください。鏡太郎さんに出会えて本当に幸せでした。 琴里】

 最後に記された彼女の名前を見た瞬間、思わず涙がこぼれそうになって目を瞑る。

 瞬間、まぶたの裏に花のような彼女の笑顔がパッと浮かんだ。

 ……幸せでした、なんて。きみはそう簡単に、俺を過去にしてしまうのか?

 悪いがこちらはそうはいかない。きみを忘れ、本来の職務に戻れだなんて一方的に言われたところで納得できるはずないだろう。

 なにより、どうして俺から離れようと思ったのか……その理由が手紙に書かれていない。

 それが意図的なものなのかどうかは不明だが、琴里との縁が完全に切れてしまったわけではないと、自分に言い聞かせる。

 一度深呼吸をして感傷的な気持ちが冷静に戻ったところで、瞼を開ける。もう一度、彼女の手紙を冷静に眺めた。

 何度読んでも、琴里の精いっぱいの愛情が伝わってくるのは変わらない。

 それなのに、彼女の出した結論は〝別れる〟。俺に金を返し、わざわざ他の町に移り住んでまで、いっさいの関係を絶とうとしている。

 そこには第三者の意思が絡んでいるとしか思えない。まさか、彼女にも権藤検事正からの圧力がかかっていた……? 

 俺に対する脅しと似たようなことを琴里も吹き込まれていたとしたら、さぞ怖かっただろう。あるいは彼女の性格なら、弓弦くんを守ろうとしたのかもしれない。

 彼はすでに一度ひき逃げにも巻き込まれているし、一刻も早く俺や検察と距離を置こうと考えるのはむしろ自然だ。

 しかし、もしも本当にそうなら……俺は、あの男を許さない。

 現時点で法が許しているとしても、必ず弱点を見つけて鉄槌を下すのだ。

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