冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
『鏡太郎さん』
愛しい人の声に名前を呼ばれた気がして、まぶたを開く。しかし、そこには無機質な白い天井があるだけだった。
こんな朝を迎えるのは、もう何度目だろう。
短い間に俺の心をさらっていき、そしていまだに返してくれない琴里の記憶は、彼女が俺の前から姿を消して二度目の春を迎えても薄れることがない。
渡せないままでいる婚約指輪も、後生大事に取ってある。
ベッドから出ると、部屋の空気は冷え切っていた。三月になって少しは温かくなってきたが、青森は東京に比べるとやはり冬の名残を引きずる期間が長い。
平日なのでワイシャツに袖を通し、キッチンでコーヒーを淹れる。
マグカップの脇に置いていたスマホが、一件のメールを受信した。
差出人は俺の父親、神馬剛太郎。間もなく定年を迎えるが、所轄の刑事課に所属し数々の事件を解決した経験があるベテラン刑事である。
父からのメールの件名は【見つかったぞ!】だった。
もしかして、琴里が見つかったのか……!?
コーヒーを淹れている途中だったが、構わずに手を止めてメールを開く。
しかしその内容は、琴里の居場所を知らせるものではなかった。