冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
頭の中が疑問符でいっぱいになるが、神馬さんはそれ以上の説明をしてくれない。気まずいドライブが十五分ほど続いた後、車は高級ブランド店が軒を連ねる街中のパーキングに入っていく。
こんなところになんの用が……?
「行くぞ」
「はい。あの、どこへ?」
「『Precious Hug』――女性ならなんの店か知ってるだろ」
車を降り、歩きながら彼が説明する。目線の先ではすでにその店の真っ白な外壁が、夏の陽射しを反射してキラキラ輝いていた。
「もちろんです。セレブや芸能人御用達の人気ジュエリーショップですよね。こないだも映画祭でレッドカーペットを歩いた女優さんが、プレシャスハグのアクセサリーを着けていて話題になってました」
たとえ自分には縁のない高級品でも、いいなぁ、と憧れるくらいのことはある。
もちろん、私には似合わないとちゃんと自覚もしているけれど。
「つまり、品質も話題性も申し分なし。そこできみへの婚約指輪を選べば、周囲は俺がどれほどきみを愛しているかを勝手に勘違いしてくれる。目くらましの便利なアイテムというわけだ」
プレシャスハグで婚約指輪を買うつもりなの!?と感激しそうになったのは一瞬。ロマンチックの欠片もない言い分にがっくりする。
結局、カモフラージュで合ってたんじゃない。偽装なんだから当たり前とはいえ、もう少しオブラートに包めばいいのに。