冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「百年の恋も冷めるセリフですね。弓弦が聞いたらどう思うか」
「だから先に帰らせたんだろ。心にもないセリフまで吐いて」
まったく、私の前では相変わらず冷めた対応である。勝手に連れ出しておいてその言い草はないでしょう。
「『もう少し一緒にいたい』……でしたっけ? いやぁ、迫真の演技でしたね~」
過剰なイケメンデフォルメを加え、彼のモノマネをする。元々冷ややかだった神馬さんの視線がさらに冷気を纏った。
「……だったらきみは、大根役者どころか幼児のお遊戯会レベルだ。弓弦くんの前で俺を『鏡太郎さん』と呼ぶとき、頬が引きつっていたぞ」
「だ、だって神馬さんと呼ぶ方が慣れてるんですもん」
むしろ、ふたつの顔を瞬時に使い分ける神馬さんの方が人間性に問題アリだと思う。
私の呼び方も、梓の前では『琴里さん』と言っていたはずが、今日は『琴里』にレベルアップしていたし。
「それじゃ、せっかく指輪を贈っても意味がないだろ。誰かに見られている時は、俺のことが好きで好きでたまらないから婚約した、という雰囲気にしてもらわないと困る」
「そう言われましても……」
この人、涼しい顔でなんて恥ずかしいことを言うんだろう。
私よりずっと年上で経験値が高いから? それとも、人の気持ちなんて考えない冷酷無比の検事だから?