冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「お待たせいたしました」
先ほどの店員がトレーにいくつかの指輪のサンプルを、そしてもうひとり別の店員が飲み物を持って入ってくる。
目の前のテーブルにに置かれた指輪の数々を見たら、私はまたしてもその輝きに魅了されてしまった。
神馬さんが隣で見守る中、薬指のサイズを計測してもらい、店員の勧めに従って次々と試着を繰り返す。
こんなに分不相応な体験ができるのも一生の内今だけだろう。そう思ったら試着だけでも楽しくて、プラチナアームにひと粒大きなダイヤがあしらわれたシンプルな指輪を顔の横に掲げ、得意顔で彼に見せる。
「見て、鏡太郎さん。芸能人の婚約発表会見」
「俺より若いくせに発想が古いな。今どきの芸能人はあまりそうやって見せびらかさないだろ」
神馬さんはふっと苦笑していつもの毒舌を炸裂させる。しかし、その後でハッとすると、気まずそうに咳払いした。
「あー、それが気に入ったのか? 琴里」
どうやら演技をするのを忘れていたみたいだ。
店員さんは彼の微妙な変化に気づいていないようだけれど、私はそのちょっとした隙がおかしくて、ついふふっと笑ってしまった。
すかさずじろりと睨まれたので、笑いを引っ込める。