冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
ジュエリーショップにいたのはほんの二時間くらいだったけれど、店を後にしてもなんだか夢心地で頭がふわふわしていた。
決めることが多くて結局飲み物に手を付けている暇がなく、最後にシャンパンを一気飲みしたせいもあるかもしれない。
「シンデレラって、こんな気分だったんですかねー……」
車に乗り込んでひと息つくと、思わずそんな言葉が口をついて出た。
それまでの貧しい生活が魔法で一変、ひと晩だけお姫様になれる。ジュエリーショップで過ごした時間は、まさにそういう現実離れした体験だった。
「……酔ってるな? きみが乗ってるのはかぼちゃじゃない。目を覚ませ」
「わかってますよ。隣にいるのは王子様じゃなくて意地悪な検事だし」
「悪かったな意地悪で」
「……でも、楽しかった」
エンジンをかけ、車を発車させようとしていた彼が動きを止めてこちらを見る。
私はやっぱり酔っているのかもしれない。天敵の検事に、本音を打ち明けようと思うなんて。
自分のお洒落なんか構っていられなかったこれまでの生活に不満があったわけではない。姉として弟のために働くのは当然だし、弟の幸せが自分の幸せだった。だけど……。