冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
急に言われてもすぐには思いつかなくて、じっと黙り込む。
絶対に叶えたい願いなら大きなものがひとつだけ、心の真ん中にあるけれど……。
「たぶん、神馬さんに言っても無駄です」
「言ってみなきゃわからないだろ。なんだ?」
「……父の無罪判決」
しん、と車内が静まり返る。
ほらね、困ってる。
検事の神馬さんが、すでに有罪が確定し服役している受刑者を無罪にしようだなんてことに、協力できるはずがない。
「前にも言ったが」
彼が言葉を発したので、顔を上げる。
「真実を知るためには、きみの協力が必要だ。検事という生き物を信用できない気持ちもわかるが、事件のこと、村雨奏二の人物像、小さなことでもいいから教えてほしい。きみのお父さんが無罪かどうかを判断するのは、それから――」
「父は潔白です……っ!」
彼が言い終わる前に、声を張り上げた。
……ダメだ。この話題になると感情的になってしまう。
神馬さんが間違ったことを言っていないのはわかっているけれど、彼が検察側の人間だと思うと、どうしても……。
「……大きな声を出してごめんなさい」