冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「別に謝る必要はない。きみがそこまで検察を不審に思うからには、過去の捜査や裁判のどこかに綻びがあるということなんだろう。だとしたら、俺はそれを正さなければいけない」
前にカフェで話した時も、似たようなことを言っていた。検察も一枚岩というわけではなく、彼自身はあの事件に疑念を持っているから、独断で調査をしていると。
あれは本当なのだろうか。神馬さんのことなら信じてもいいのではと思う自分もいるけれど、父だって、検事が正しい判断を下してくれると信じて……結局、裏切られた。
「もう少し、時間をください。本当の神馬さんがどんな人なのか、まだ知らないことの方が多いので」
「ああ。大事な話だから慎重になるのは当然だ。しかし本当の俺といっても、別に見たままの人間だと思うけどな」
自信たっぷりに神馬さんが言う。でも、見たままの彼から私が連想するのは、決して正義のヒーローではない。
赤信号で車が止まったところで、私はチラッと彼を見て言った。
「それだと、極悪検事ってことになりますけど」
「……きみはたまに、その極悪検事より口が達者だよな」
そう言ってこちらを一瞥する彼の冷たい目が本当に悪役のようで、思わずクスッと笑いが漏れる。
さっきまでシリアスな話をしていたはずなのに不思議。神馬さんから憎まれ口を叩かれるのは、どうしてか嫌じゃないんだよね……。