冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

「ジンちゃん、やっと男を見せたのね!」
「あの偏屈なジンちゃんには、琴里ちゃんみたいな健気な子が合うと思ってたよ~。とにかくおめでとう!」
「ありがとうございます」

 偽装婚約だから全然おめでたくはないのだけれど、ふたりがこんなにも喜んでくれると、まんざらでもない気分だ。

「ああほら、噂をすればジンちゃん来たわよ。今日はカレーの日だから、ちゃちゃっと用意しちゃいましょうか」

 出入り口に神馬さんの長身を認めた白浜さんがそう言って動き出そうとしたが、私は慌てて声をかける。

「ちょっと待ってください。今日、カレーじゃないかもしれません」
「えっ?」

 小さな食券を手にした彼がカウンターへ近づいてくる。遠くからではさすがに文字が読めないので、大人しく彼の注文を待つ。

「……これ」

 メニュー名は口にせず、食券をただこちらに差し出してくる神馬さん。そこには【旨さ殺人罪・カオマンガイ】の文字があった。

 宣言通り、約束を果たしに来てくれたみたいだ。

「了解です。白浜さん、カレーじゃなくてカオマンガイお願いします」
「あらま~、珍しいこともあるもんね。真夏に雪が降るかしら?」

 白浜さんが目を丸くし、カウンター越しに神馬さんを見つめる。紅林さんも、すかさずこちらへ歩み寄ってきた。

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