君の鼓動を、もう一度
点滴の滴る音だけが、一定のリズムで響いていた。
ベッドの上で横たわる美咲は、どこか疲れたように天井を見つめていた。
その傍らに、椅子を引いて腰掛けている悠斗。彼の表情は柔らかく、けれど目はどこか悲しげだった。
「……まだ、震えてる?」
悠斗の問いに、美咲は小さく首を横に振る。
「ううん……大丈夫。落ち着いた。……ありがとね、あの時」
「間に合って、よかったよ」
美咲は苦笑いを浮かべる。
「……怖かった。ほんとに、死ぬってこういうことなんだって思った。あんな風に、自分で終わらせようとしたのに……最後の最後で、死ぬのが怖くなったの。勝手だよね」
「勝手でもいい。怖くなってくれて、ありがとう」
その言葉に、美咲は目を見開き、そっと視線を逸らした。
「……私、もうちょっとだけ、生きてみようかな」
「うん。俺は、その“ちょっと”を、何年でも何十年でも伸ばしてやる」
言葉に迷いはなかった。
ふたりの間に、ようやく確かな温度が宿り始めていた――そんなときだった。
「……バカやろう!!」
病室のドアが勢いよく開かれ、翔太が飛び込んできた。
「お前……! 何してんだよ……!!」
顔をぐしゃぐしゃにしながら、美咲に駆け寄る翔太。
ベッドの傍まで来た途端、彼は言葉にならない嗚咽を漏らした。
「死のうとしたって、マジかよ……そんなの、聞いてねぇよ……!」
「翔太……ごめん」
泣きながら怒る翔太に、美咲は申し訳なさそうに笑った。
「もう、怒らないから……でも二度とやんないって約束しろよ。今度やったら、俺、ほんとに許さねぇからな」
「うん……もう絶対、しない」
小さく頷いた美咲の手を、翔太はそっと握った。
その横で、悠斗も静かに立ち上がる。
「翔太、ありがとう。来てくれて」
「兄貴こそ、ナイスキャッチだったな。……てか、ほんとよく助けたよ。あれ、あと数秒遅れてたら……」
翔太が言葉を詰まらせる。
その言葉の先にある“もしも”は、誰も口にしなかった。
「……今、美咲の容態に合った治療方針を、もう一度すべて見直してる。前に考えてた手術が無理でも、別のアプローチはあるはずだ」
「そんなの……あるの?」
美咲が、不安そうに問う。
悠斗は一瞬、真剣な表情になった後――力強く頷いた。
「ある。いや、探し出す。どれだけ時間がかかっても、俺は諦めないって決めたから」
「……うん。じゃあ私も……ちゃんと、向き合う」