君の鼓動を、もう一度

6.新たな選択肢

数日後。
 医局の会議室で、悠斗は数人の専門医たちと資料を広げていた。

 「……この方法なら、美咲さんの今の心機能でも耐えられる可能性はある。ただし、根本的な治療ではない。延命措置としての“バイパス”に近いものだ」

 「再手術のリスクは?」

 「高い。けれど、状態が安定している“今”しかチャンスはない。術後の管理も慎重に行えば、退院して自宅での生活に戻ることもできる」

 悠斗は深く頷いた。
 そして静かに言った。

 「……それでも、彼女に生きてほしい。少しでも長く、彼女が笑っていられる時間を作るために、俺はこの手術をやる」




 「完治はしない。……それでも、時間を稼げる可能性はある」

 そう切り出した悠斗の声は穏やかだったが、どこか緊張も滲んでいた。

 「手術はリスクもある。だけど、成功すれば退院もできる。自分で歩いて、外の空気を吸って、日常を取り戻せる時間が、もう一度だけ手に入るかもしれない」

 美咲は、静かに目を閉じた。
 翔太がそばでそっと肩を支える。

 「……それって、“その時間をどう使うかは自分で決めろ”ってこと?」

 「そうだ。でも、俺は……お前とその時間を一緒に生きたいと思ってる」

 悠斗の言葉に、美咲の肩が小さく揺れた。
 しばらくの沈黙のあと、彼女は小さく、でも確かに頷いた。

 「……わかった。私、やってみる。今度は逃げない。生きてみたいって思ったから」

 悠斗もまた、微笑んだ。

 「ありがとう。絶対に、成功させるから」
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