君の鼓動を、もう一度
外ではすでにパトカーのサイレンが遠く近くで交差し、バスの周囲にはバリケードが張られていた。
だが車内の空気は張り詰めたまま、誰一人として安心なんてしていなかった。

犯人の一人が無線機で怒鳴りながら、外の警察とやりとりをしている。

「――違う!俺たちは逃げたいんじゃない、そっちがこの事態をどう終わらせたいか聞いてんだよ!」

焦りとも苛立ちともつかない声に、乗客たちはますます怯えた。
美咲は震えながらも、そっと顔を上げ、車内を観察し始める。

(ただの金目的の犯行じゃない……何か“目的”がある)

ふと、前方の席――

黒いフードをかぶった男に、犯人の一人がしきりに視線を送っていることに気づく。
(あの人……他の乗客とは、少し空気が違う)

犯人の視線、美咲の勘、静かな車内に流れる張り詰めた緊張。
何かがおかしい――そう感じた美咲の胸が、嫌な予感でざわついた。

その時だった。

「おい、こっちに来い」
犯人が数人の人質の中から、若い男を一人指差した。
「お前、◯◯って名前だろ?俺たちの“伝言”は、お前が聞いてるはずだ」

「な、なに言って……僕は、ただの学生です……!」

「とぼけんな!お前がアイツの息子だって、調べはついてるんだよ!」

(……狙いは“その人”だった……)

乗客たちがどよめき、美咲も息をのむ。

「おい!」

別の犯人が、再び銃を振りかざしながら言う。

「外の奴らに伝えろ。こっちは“標的”を確保してるってな。時間が来たら――撃つ」

空気が凍りついた。

美咲は手を強く握りしめた。
(どうすればいいの……悠斗……)

その時、彼女の脳裏に、病院で見せた悠斗の真剣な眼差しが浮かんだ。

(――絶対に、死なせたくない)
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