君の鼓動を、もう一度
沈黙が続く。誰もが息を呑む中、一人の犯人が焦れたように叫んだ。

「くそっ、応答がない……取引するって話だっただろうが!」

トランシーバーを叩きながら、苛立ちを露わにするその姿に、
別の若い男――まだ若く、目に怯えを湛えたその犯人が動揺したように呟く。

「……やっぱり、やめよう。もう、こんなの……!」

「バカかてめえ、ここまで来て今さら――」

「こんなことになるなんて聞いてなかった……もう、無理だって!」

若い犯人は、パニック状態に陥ったように銃を振り回し始めた。

「う、動くな……!誰も近づくなよ!!」

車内がざわめく。叫び声が飛び交い、乗客たちは座席の陰に隠れるように伏せていく。

「落ち着け、銃を下ろせ!」
リーダー格の男が必死に声をかけるが、若い男の手は震え、汗が額を伝う。

その時だった。

「やめて! 落ち着いて……!」

ゼミ仲間の一人――小柄な女子学生が、止めようと一歩前に出てしまった。

「……近づくなって言っただろぉお!!」

――銃口が、その子に向けられた。

「ダメ!!」

美咲は咄嗟に飛び出していた。
体が先に動いていた。

(守らなきゃ――)

そして、

――パンッ。

乾いた銃声。

「っ……」

美咲の体が、一瞬宙に浮いたように見えた。

「美咲っ!!」

そのまま、彼女は床に崩れ落ちた。
肩から――赤が、あふれ出す。

友人たちの悲鳴。
犯人たちのざわめき。
それらの音が遠ざかる。

(あぁ……動けないや)

視界が滲んで、誰かの泣き声が遠くで聞こえた。

(……悠斗、怒るかな。ごめんね……)

まぶたが、ゆっくりと閉じかけた――その瞬間。

「負傷者が出た。救急搬送、許可しろ!」

怒号と共に、トランシーバーから救急隊とのやり取りが始まる。

そして、車外の救急スタッフがバスへと駆け寄ってくる―
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