君の鼓動を、もう一度

「バスジャックからの搬送、あと3分です!」

「容態重いのは1名、銃創。20代前後の女性、意識レベル低下、出血多量!」

医師たちの緊迫した声が飛び交う中、
悠斗は冷静に、しかし内心のざわつきを押さえ込むように口を開いた。

「CT室とOPE室をすぐ確保。脳外と循環器チームにも連絡を。外傷の確認を最優先して、ショック状態なら即対応する」

(さっきから変な胸騒ぎがしてる――)

汗ばむ手袋をはめ直しながら、なぜか胸が締め付けられる感覚が続いている。
何百人、何千人の患者を診てきた彼でも、いまこの感情に理由がつけられなかった。

そして――

「搬送来ました!!」

救急車の扉が開き、担架が運び込まれてくる。

「20代女性、銃創によるショック状態、出血多量です!」

(……ん?)

ふと、担架の上の彼女の顔が目に映った。

その瞬間、
悠斗のすべての思考が――凍りついた。

「……うそ、だろ」

声にならない声が漏れる。

(美咲――!?)

目の前に横たわっているのは、
あの明るくて、無邪気で、でも誰よりも人を思いやる彼女だった。

血に染まった服。
虚ろな表情。
白くなっていく唇。

「たちばな先生!? 指示を!」

「……」

思考が追いつかない。
足が動かない。
手が震えている。

「先生!!」

強く肩を叩かれ、ようやく息を吸い込んだ。

「……OPE室に運べ!!外傷チームと同時に循環器を入れる。胸腔ドレーンと出血箇所の止血処置を最優先。彼女は……絶対に……助ける!!」

目が、決意で燃える。
いつもの冷静さはそこになかった。

ただ、
一人の男が――
たった一人の、大切な人を救おうとしていた。
< 40 / 43 >

この作品をシェア

pagetop