君の鼓動を、もう一度
「バスジャックからの搬送、あと3分です!」
「容態重いのは1名、銃創。20代前後の女性、意識レベル低下、出血多量!」
医師たちの緊迫した声が飛び交う中、
悠斗は冷静に、しかし内心のざわつきを押さえ込むように口を開いた。
「CT室とOPE室をすぐ確保。脳外と循環器チームにも連絡を。外傷の確認を最優先して、ショック状態なら即対応する」
(さっきから変な胸騒ぎがしてる――)
汗ばむ手袋をはめ直しながら、なぜか胸が締め付けられる感覚が続いている。
何百人、何千人の患者を診てきた彼でも、いまこの感情に理由がつけられなかった。
そして――
「搬送来ました!!」
救急車の扉が開き、担架が運び込まれてくる。
「20代女性、銃創によるショック状態、出血多量です!」
(……ん?)
ふと、担架の上の彼女の顔が目に映った。
その瞬間、
悠斗のすべての思考が――凍りついた。
「……うそ、だろ」
声にならない声が漏れる。
(美咲――!?)
目の前に横たわっているのは、
あの明るくて、無邪気で、でも誰よりも人を思いやる彼女だった。
血に染まった服。
虚ろな表情。
白くなっていく唇。
「たちばな先生!? 指示を!」
「……」
思考が追いつかない。
足が動かない。
手が震えている。
「先生!!」
強く肩を叩かれ、ようやく息を吸い込んだ。
「……OPE室に運べ!!外傷チームと同時に循環器を入れる。胸腔ドレーンと出血箇所の止血処置を最優先。彼女は……絶対に……助ける!!」
目が、決意で燃える。
いつもの冷静さはそこになかった。
ただ、
一人の男が――
たった一人の、大切な人を救おうとしていた。