君の鼓動を、もう一度
美咲が目を覚ましたとき、隣には変わらず悠斗がいた。白衣のまま、椅子に座り、目を閉じていた。
「……悠斗くん……」
微かに声を漏らすと、彼はすぐに目を開けた。
そして、安心したように、そっと微笑む。
「大丈夫か?」
「うん……少し、息が楽になった……」
美咲は、ふと視線を逸らした。
さっきの自分の言葉を思い出し、胸が痛くなる。
「……ごめん。あんなこと、言うつもりじゃなかったのに……」
「いや、いい。言ってくれて、よかった」
悠斗の声は変わらず穏やかで、けれどどこか寂しさを滲ませていた。
「お前が抱えてきたもの、少しだけど分かった気がする。俺が“医者”だからって、何でも理解してるつもりになってた」
言葉を選ぶように、一呼吸置いてから彼は言った。
「でもな、美咲。俺はただの“担当医”じゃない。
——お前を、救いたいと思ってる。心臓じゃなくて、ちゃんと“お前”を」
美咲は、目を見開いた。
心のどこかにあった、小さな希望がふわりと浮かび上がる。
「……ほんとに、そんなこと……思ってくれてるの?」
「本気じゃなきゃ、こんなに悔しくなんかならない」
その言葉に、美咲の胸がじんわりと温かくなった。
そして同時に、少しだけ勇気も湧いてきた。
「……検査、ちゃんと受けるね」
「そうしろ。今度こそ逃がさないからな」
冗談のように言いながらも、悠斗の目は真剣だった。
「今回の発作で、症状の進行が少し早まってる可能性がある。早めに精密検査をして、治療方針を見直したい。今なら、まだ手はある」
「……うん。悠斗くんがそう言うなら、信じる」