君の鼓動を、もう一度

4.新たな道

その後、数日が経った。

 美咲は翔太と何度も話すことで、心の中にあったモヤモヤを少しずつ整理できた。
 最初は何もかもが怖くて、どうしていいのかわからなかったが、翔太の言葉と、少しずつ心が軽くなる感覚に支えられながら、彼女は再び自分を取り戻しつつあった。

 「翔太くん、ありがとうね……」

 「いいんだよ、そんなに気を使わないで。お前が元気出してくれれば、それで俺は嬉しいんだから」

 美咲は軽く笑いながら、バスケのキーホルダーを手のひらで転がした。

 「でも、もう一度頑張ってみようかな……治療に関して。何もせずに諦めるのは、やっぱり嫌だし」

 「そうだよ!諦めるのは早すぎる!」

 その時、美咲は翔太の言葉に背中を押されたように感じた。
 「よし、また少しでも前に進んでみよう」





 一方、悠斗は日々、過酷な現実に直面していた。
 美咲の状態が進行している中で、彼は新しい治療法や術式を模索し続けていたが、どこまで行っても行き詰まり感が募る一方だった。

 「どうすればいいんだ……」

 悠斗は病院内の資料を広げ、他の病院とも連携を取ろうと必死に調べた。
 手術の成功率や患者の状態に合わせた治療法を探し求めるが、どれも美咲にはリスクが高すぎるものばかりだった。

 その夜、突然ノックの音が聞こえる。

 「悠斗、ちょっといい?」

 振り向くと、そこには美咲が立っていた。

 「美咲……?」

 美咲は少しだけ躊躇ったが、勇気を振り絞るように口を開いた。

 「今、少しだけお話してもいい?」

 「もちろん、どうした?」

 美咲は座ると、しばらく黙ったままで、悠斗の顔を見つめていた。

 「実は……私、もう一度治療に挑戦しようと思う」

 「……本当に?」

 悠斗は驚いた。
 最初はどこか避けているようだった美咲が、自分から治療を選ぶなんて……それだけでも、彼女の心に何かが変わったのだと感じた。

 「うん。翔太くんと話して、少し元気が出たんだ。私、まだやれることがあるんじゃないかって思う。だから、もう一度、挑戦してみたい」

 その言葉を聞いて、悠斗の胸の中に熱いものが込み上げてきた。

 「美咲……よかった。君がそう言ってくれて、俺ももう一度全力で戦いたい」

 美咲はほんの少し微笑んだ。
 「ありがとう、悠斗くん。あなたがいてくれるから、私も強くなれる気がする」



 その夜、悠斗はひとり病院のベランダに立ち、冷たい風を感じながら考えていた。

 “美咲が前向きになった……でも、それだけじゃ足りない。俺が、もっとできることがあるはずだ”

 悠斗はその決意を心に固め、夜空を見上げた。

 「絶対に、君を救う。もう一度だけ、俺の手で——」
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