白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ王女は甘い夜を過ごしたい~【全年齢版】
未知の病
男の子が、泣いている。
庭園の隅の植え込みに隠れるように、とても綺麗な男の子が一人で膝を抱えていた。
年は自分より少し上だろうか。涙こそ流してはいないけれど、ひどく悲しそうな表情に見えた。
ここにいるということはそれなりに身分が高い家の子に違いない。
まだ幼くともプリムローズは王女として、貴族は高い矜持を持っているのだと教わっていた。だから無暗に矜持を傷つけるような真似は、たとえ王女であろうとしてはいけない。否、王女だからこそしてはいけないのだと教わった。
彼も弱っているところは見られたくないだろうし、見なかったふりをして立ち去った方が良いのかもしれない。
だけど放っておけなくて、ドレスが汚れるのも構わず隣に座った。
(黒いドレスだもの。少し汚れたって目立たないわ)
それに、隣に人がいるのがいやなら男の子だって自分からいなくなるはず。
男の子は突然隣に座られて驚いたような顔を見せたものの何も言わず、立ち去ることもしなかった。
何も言わず、聞くこともなく、じっと寄り添う。
少しでも元気になってくれたら良いと思いながら。
□■□■□■
眩しさを感じて、何度かまばたきを繰り返して目を開ける。
少しだけ眉を寄せると、ややあってわずかに暗くなった。光が差していた方向に顔を向ければ、天蓋からレースのカーテンがかけられている。自室のベッドのそれとは違う、見慣れない織りだ。
(ここは、どこ……?)
夢を見ていた。
とても懐かしくて大切な夢だ。
プリムローズの中に、初めて淡い想いが芽生えた日の。
(――あ)
記憶を手繰り、慌てて跳ね起きる。
着ているのは上質な絹のローブだった。淡いピンク色に染められ、艶やかな光沢を放っている。腰の辺りには気崩れることのないように丁寧にリボンが結ばれており、あきらかに人の手で着せられていた。
あの例の下着もどきは……とさりげなく確認すると、ローブの下に着ているままだった。
「目が覚めましたか」
優しい声がかけられる。
声の主が誰なのかは確かめるまでもない。
けれども伝えたいことがあるし、何よりも顔が見たくて視線を向けた。
「昨夜は申し訳ございませんでした」
庭園の隅の植え込みに隠れるように、とても綺麗な男の子が一人で膝を抱えていた。
年は自分より少し上だろうか。涙こそ流してはいないけれど、ひどく悲しそうな表情に見えた。
ここにいるということはそれなりに身分が高い家の子に違いない。
まだ幼くともプリムローズは王女として、貴族は高い矜持を持っているのだと教わっていた。だから無暗に矜持を傷つけるような真似は、たとえ王女であろうとしてはいけない。否、王女だからこそしてはいけないのだと教わった。
彼も弱っているところは見られたくないだろうし、見なかったふりをして立ち去った方が良いのかもしれない。
だけど放っておけなくて、ドレスが汚れるのも構わず隣に座った。
(黒いドレスだもの。少し汚れたって目立たないわ)
それに、隣に人がいるのがいやなら男の子だって自分からいなくなるはず。
男の子は突然隣に座られて驚いたような顔を見せたものの何も言わず、立ち去ることもしなかった。
何も言わず、聞くこともなく、じっと寄り添う。
少しでも元気になってくれたら良いと思いながら。
□■□■□■
眩しさを感じて、何度かまばたきを繰り返して目を開ける。
少しだけ眉を寄せると、ややあってわずかに暗くなった。光が差していた方向に顔を向ければ、天蓋からレースのカーテンがかけられている。自室のベッドのそれとは違う、見慣れない織りだ。
(ここは、どこ……?)
夢を見ていた。
とても懐かしくて大切な夢だ。
プリムローズの中に、初めて淡い想いが芽生えた日の。
(――あ)
記憶を手繰り、慌てて跳ね起きる。
着ているのは上質な絹のローブだった。淡いピンク色に染められ、艶やかな光沢を放っている。腰の辺りには気崩れることのないように丁寧にリボンが結ばれており、あきらかに人の手で着せられていた。
あの例の下着もどきは……とさりげなく確認すると、ローブの下に着ているままだった。
「目が覚めましたか」
優しい声がかけられる。
声の主が誰なのかは確かめるまでもない。
けれども伝えたいことがあるし、何よりも顔が見たくて視線を向けた。
「昨夜は申し訳ございませんでした」