白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ王女は甘い夜を過ごしたい~【全年齢版】
やっぱりアルバートは深刻な病を患っているのだ。
プリムローズはそれを無責任な行動で暴き立て、彼に恥をかかせてしまった。謝って済むことではない。
でも白い結婚を送りたい理由が〝毒キノコ病〟のせいなら、完治したら良いのではないか。
何よりも妻としてではなく、人として心配だ。
アルバートにはずっと、いつだって元気でいて欲しい。
「病のことは姫以外に誰も知りません。ですから姫も決して、他人には口外なさらないでいただけますか」
「も、もちろんです」
神妙に頷き返す。
でもこんな状況なのにプリムローズの心は大きな喜びに満たされ、打ち震えてしまう。
(他にはどなたもご存知ないことを、わたくしにだけ打ち明けて下さったのだもの)
嫌われているわけじゃない。
むしろ大切なことを話してくれた。それだけで泣きたくなるくらい嬉しい。
意を決して手を伸ばす。
ベッドの上に置かれたアルバートの右手に自らの両手を重ね合わせるとまた、びくりと反応されてしまった。
手に触れられるのもいやなのだろうか。
先程までの浮かれた気持ちが萎んで行くほど悲しいけれど、昨日の今日で無理強いは良くない。できることから少しずつするのだ。
静かに手を戻し、悪意や敵意なんてないと証明するかのように微笑みかける。
「アルバート様のご病気が一日でも早く快癒されますよう、わたくしも全力でお手伝い致しますね。ですからどうぞ、頼りないとは思いますがご安心なさって」
ところがアルバートは何とも言えない、複雑そうな顔をした。
病気が治って欲しくないのだろうか。
そんなまさか。
だって毒キノコなのに。
「アルバート様?」
「――ああ、いえ……」
アルバートは視線を彷徨わせ、再びプリムローズに視線を向けた。
真っすぐに見つめてくれるその目には、先程までの逡巡の色はどこにもない。見方によっては事務的とも言える表情だ。
「朝食の準備をさせています。姫の支度が終わりましたら食事にしましょう」
「それは、アルバート様もご一緒して下さるということですか?」
「はい」
表情こそ硬いものの、発せられた言葉はこのうえなく嬉しいものだった。
今から支度となると湯浴みをして着替えて――必要な時間を頭の中で素早く計算する。アルバートの顔は見ていたいけれど、後でまた見られるのだ。のんびりしてはいられない。
「続き部屋で読書をしながらお待ちしておりますから、ごゆっくり支度なさって下さい」
「お心遣いありがとうございます、アルバート様」
身支度を整えて朝食を摂ったら、アルバートは今日も執務に向かうのだろう。その間、立ち入りに許可が必要ならもらって図書室に行こうと思う。
図書室の本はすでにアルバートも調べていると思うけれど、膨大な蔵書数だからまだ目を通していない本もきっとあるはずだ。もしかしたらその中に治療法が書かれているものがあるかもしれない。
そうと決まればプリムローズはいそいそとイレーヌを呼んで準備をはじめた。
プリムローズはそれを無責任な行動で暴き立て、彼に恥をかかせてしまった。謝って済むことではない。
でも白い結婚を送りたい理由が〝毒キノコ病〟のせいなら、完治したら良いのではないか。
何よりも妻としてではなく、人として心配だ。
アルバートにはずっと、いつだって元気でいて欲しい。
「病のことは姫以外に誰も知りません。ですから姫も決して、他人には口外なさらないでいただけますか」
「も、もちろんです」
神妙に頷き返す。
でもこんな状況なのにプリムローズの心は大きな喜びに満たされ、打ち震えてしまう。
(他にはどなたもご存知ないことを、わたくしにだけ打ち明けて下さったのだもの)
嫌われているわけじゃない。
むしろ大切なことを話してくれた。それだけで泣きたくなるくらい嬉しい。
意を決して手を伸ばす。
ベッドの上に置かれたアルバートの右手に自らの両手を重ね合わせるとまた、びくりと反応されてしまった。
手に触れられるのもいやなのだろうか。
先程までの浮かれた気持ちが萎んで行くほど悲しいけれど、昨日の今日で無理強いは良くない。できることから少しずつするのだ。
静かに手を戻し、悪意や敵意なんてないと証明するかのように微笑みかける。
「アルバート様のご病気が一日でも早く快癒されますよう、わたくしも全力でお手伝い致しますね。ですからどうぞ、頼りないとは思いますがご安心なさって」
ところがアルバートは何とも言えない、複雑そうな顔をした。
病気が治って欲しくないのだろうか。
そんなまさか。
だって毒キノコなのに。
「アルバート様?」
「――ああ、いえ……」
アルバートは視線を彷徨わせ、再びプリムローズに視線を向けた。
真っすぐに見つめてくれるその目には、先程までの逡巡の色はどこにもない。見方によっては事務的とも言える表情だ。
「朝食の準備をさせています。姫の支度が終わりましたら食事にしましょう」
「それは、アルバート様もご一緒して下さるということですか?」
「はい」
表情こそ硬いものの、発せられた言葉はこのうえなく嬉しいものだった。
今から支度となると湯浴みをして着替えて――必要な時間を頭の中で素早く計算する。アルバートの顔は見ていたいけれど、後でまた見られるのだ。のんびりしてはいられない。
「続き部屋で読書をしながらお待ちしておりますから、ごゆっくり支度なさって下さい」
「お心遣いありがとうございます、アルバート様」
身支度を整えて朝食を摂ったら、アルバートは今日も執務に向かうのだろう。その間、立ち入りに許可が必要ならもらって図書室に行こうと思う。
図書室の本はすでにアルバートも調べていると思うけれど、膨大な蔵書数だからまだ目を通していない本もきっとあるはずだ。もしかしたらその中に治療法が書かれているものがあるかもしれない。
そうと決まればプリムローズはいそいそとイレーヌを呼んで準備をはじめた。