白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ王女は甘い夜を過ごしたい~【全年齢版】
 何しろ、初恋の姫君があんなしどけない格好をして迫って来たのだ。その気になるなと言う方がおかしい。
 淡いシャーベットグリーンのベビードールはとてもよく似合っていたし、薄手のシフォン素材からは華奢な身体のラインがほのかに透けていた。
 そのうえ、四つん這いになって胸元の布地を引っ張りながらのぞき込んだりしたものだから、正面にいるアルバートからも二つの白いふくらみが直接見えてしまった。とても柔らかそうなふくらみの頂上は慎ましやかな薄桃色の突起が飾り、可愛らしくも煽情的なその光景に自然と目が奪われた。

 彼女の動きに合わせて弾む様は瑞々しい果実が涼やかな風に揺れる様とよく似て、けれど全く異なるものだ。
 決して、おいしそうな甘い匂いと色形に本能を煽られたからと、誘われるまま捥いで食べたりしてはいけない。
 だからアルバートは視線を背けるしかできなかった。

「そそられなかったって、じゃあ誰なら……ん、そそられたって言ったのか?」
「いちいち繰り返さなくていい」
「生真面目だと思ってたけど性欲自体はあったんだな」
「人のことを何だと思ってるんだ」

 抱きたいか抱きたくないかで答えるなら抱きたいに決まっている。
 だからあの時も――それを〝毒キノコ〟だなんて思われたのはさすがにショックを受けたが――反応してしまったわけで。

「まあ、そうだな、すまん。二十一にもなって何も聞かないから、てっきり不能か男色なのかと思っていたりもしたんだが、ちゃんと女の子相手に勃ちはするんだな」
「――繰り返さなくていいと言ったはずだが」

 何故、昨夜からいらぬ辱めを受けるのか。

 アルバートとて健全な成人男性である。
 初恋の女の子のあられもない姿はむしろ目に悪いくらい刺激的に感じたし、気を失ってしまった彼女に再びローブを着せるのだって、これまでの人生でこんなに緊張したことはないと思うくらい緊張で手が震えた。

 できる限り素肌に触れないよう慎重に動いたが、もしも寝返りを打った拍子に誘惑に満ちた果実に手が当たらないか、ひたすら気も配った。
 その後、同じベッドで寝るだけのことはしようと横たわったら、安心しきった様子で擦り寄って来るから歴代の国王の名と就任した年を、意味もなく頭の中で復唱した。ようやく眠りについたのは外が明るくなりはじめた頃で、寝不足なのは偏にそのせいだ。

「それで夫婦になった相手なら何も問題ないと思うが」
「一年経ったらフィラグランテに帰すんだ。そんな無責任なことはできない」
「帰すって言うけど、そういう意図で結んだ婚婚じゃないだろう?」

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