白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ王女は甘い夜を過ごしたい~【全年齢版】
駆け引き
「姫様にお会いしたいとお客様がいらっしゃったようです。いかがなさいますか?」
部屋でのんびりと刺繍をしていると来客の報せがあった。
全く心当たりがなく、イレーヌに確認してもらうとアルバートの従兄と名乗る、フレデリックという身なりの良い青年がやって来たという。そもそも怪しい人物なら部屋を出てすぐの場所に控える二人の衛兵に止められているだろうから、身分を偽っているということはなさそうだ。
フレデリックとは結婚前に二、三度、面識があり、挨拶程度の会話をしたことがあるくらいだった。
やや派手な印象を受ける美丈夫ではあるけれど、アルバートとはさほど似ていない。そんな彼が、わざわざ訪ねて来るなんてどうしたことだろう。
「お久し振りにございます、フレデリック様」
「プリムローズちゃんとは結婚式以来だね」
客間を兼ねた最初の部屋に通してもらったフレデリックは、思い描いた人物で間違ってはいなかった。淑女の礼で歓迎の挨拶をし、椅子に勧める。イレーヌにお茶の支度を頼んでプリムローズも正面の椅子に腰を下ろした。
「アルバート様と一緒にご公務の最中だったのではないのですか?」
「今はアルバートが仮眠中だからね、君と一度ゆっくり話してみたかったから見張りをつけて置いて来た」
「そうでしたの」
アルバートは、仮眠している。
膝枕をしてあげたいなんて想像をして、用件を尋ねた。
「フレデリック様は今日はどうしてこちらに?」
「んー、いや、プリムローズちゃん本人には少し言いにくい話ではあるんだけど、大事な話があって」
そこでフレデリックは周囲を気にするような視線を巡らせる。
疚しいことなど何一つなくとも、室内で殿方と二人きりになるのは良くない。人妻となったのだからなおさらだ。
だから毅然とした態度で接しようと背筋を伸ばす。けれどフレデリックは声を潜ませて告げた。
「結婚してからと言うもの、アルバートがよく仮眠を取るようになったんだよね。夜、ちゃんと寝れてない……それが新婚だからって理由なら良いけど、どうも違うみたいだし」
結局、プリムローズは簡単に駆け引きに負けてしまった。
お茶の準備を終えたイレーヌに、少しの間二人きりにして欲しいと告げる。イレーヌは怪訝そうな目を向けたけれど、渋々と言った様子で奥の部屋に控えて行った。
部屋でのんびりと刺繍をしていると来客の報せがあった。
全く心当たりがなく、イレーヌに確認してもらうとアルバートの従兄と名乗る、フレデリックという身なりの良い青年がやって来たという。そもそも怪しい人物なら部屋を出てすぐの場所に控える二人の衛兵に止められているだろうから、身分を偽っているということはなさそうだ。
フレデリックとは結婚前に二、三度、面識があり、挨拶程度の会話をしたことがあるくらいだった。
やや派手な印象を受ける美丈夫ではあるけれど、アルバートとはさほど似ていない。そんな彼が、わざわざ訪ねて来るなんてどうしたことだろう。
「お久し振りにございます、フレデリック様」
「プリムローズちゃんとは結婚式以来だね」
客間を兼ねた最初の部屋に通してもらったフレデリックは、思い描いた人物で間違ってはいなかった。淑女の礼で歓迎の挨拶をし、椅子に勧める。イレーヌにお茶の支度を頼んでプリムローズも正面の椅子に腰を下ろした。
「アルバート様と一緒にご公務の最中だったのではないのですか?」
「今はアルバートが仮眠中だからね、君と一度ゆっくり話してみたかったから見張りをつけて置いて来た」
「そうでしたの」
アルバートは、仮眠している。
膝枕をしてあげたいなんて想像をして、用件を尋ねた。
「フレデリック様は今日はどうしてこちらに?」
「んー、いや、プリムローズちゃん本人には少し言いにくい話ではあるんだけど、大事な話があって」
そこでフレデリックは周囲を気にするような視線を巡らせる。
疚しいことなど何一つなくとも、室内で殿方と二人きりになるのは良くない。人妻となったのだからなおさらだ。
だから毅然とした態度で接しようと背筋を伸ばす。けれどフレデリックは声を潜ませて告げた。
「結婚してからと言うもの、アルバートがよく仮眠を取るようになったんだよね。夜、ちゃんと寝れてない……それが新婚だからって理由なら良いけど、どうも違うみたいだし」
結局、プリムローズは簡単に駆け引きに負けてしまった。
お茶の準備を終えたイレーヌに、少しの間二人きりにして欲しいと告げる。イレーヌは怪訝そうな目を向けたけれど、渋々と言った様子で奥の部屋に控えて行った。