白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ王女は甘い夜を過ごしたい~【全年齢版】
その言葉が、いちばんプリムローズの心を抉った。
エリザベスもそこに気がついたらしい。再び口元を意地悪そうに吊り上げる。女として勝った。そういう顔だ。
「一体何の騒ぎだ」
王妃とのお茶会が終わったと連絡を受けたからなのか、エリザベスがプリムローズと接触を持ったからなのか。
いずれにしろ偶然とは思えないタイミングでアルバートが姿を見せた。
「アルバート……!」
エリザベスはアルバートを見るなり、涙ながらに駆け寄った。先程までの態度はどこへやら、一転して弱々しい態度でしなだれかかる。
「プリムローズ様ったらひどいの。フィラグランテの王女であることを笠に着て、わたくしにひどい暴言を……」
「まあ! 我が姫様を一方的に侮辱しておいて、正当な反論をされたら暴言だなどと何て言い草!」
嘘をつくエリザベスにイレーヌは激昂した。
どんな時もイレーヌは味方でいてくれる。そのことに強い喜びを覚えながらプリムローズはやんわりと首を振り、たった一人の味方である彼女を制した。
アルバートは、エリザベスの言い分を信じるのだろう。
だって、本当に結婚したい人だから。
「姫、」
「わたくしが否定したところで、エリザベス様のお味方はそちらの侍女も含めて五人いらっしゃいます。イレーヌしかいないわたくしが何を申し上げようと、信じては下さらないのでしょう?」
五人。
その数字にアルバートが表情を変えた。
エリザベスが連れている侍女は全部で四人だ。数が合わない残りの一人は自分のことを示していると気がついたのだろう。
「申し開きは何も致しません。どうぞエリザベス様の証言を受けて、殿下がご判断なさって下さい。そのご決定に、従いますから」
「姫様……!」
「いいの。行きましょう、イレーヌ」
期待なんてしない。
プリムローズは一行に対して淑女の礼をすると顔を上げたまま、王女らしく毅然とした姿勢を崩さずにその横を通り抜けた。
背中に侮蔑と優越感のこもった強い視線が刺さる。振り向けばきっと、エリザベスは勝ち誇った笑みを浮かべているに違いない。でもプリムローズには勝ち負けなんてどうでも良かった。
「待って下さい、姫。話したいことがあります」
足を止めることも振り返ることもしない。
プリムローズは政略で嫁いで来た、たった一年限りの妻でしかないのだ。
離縁した後にアルバートがどうするつもりでいるのかなんて、聞きたくもない。
「――リジィ!」
後ろから手を掴まれた。
何が起こったのか分からなくて顔を上げる。
真剣な、けれどどこか泣きそうな顔でアルバートがプリムローズの手を掴んでいた。
エリザベスもそこに気がついたらしい。再び口元を意地悪そうに吊り上げる。女として勝った。そういう顔だ。
「一体何の騒ぎだ」
王妃とのお茶会が終わったと連絡を受けたからなのか、エリザベスがプリムローズと接触を持ったからなのか。
いずれにしろ偶然とは思えないタイミングでアルバートが姿を見せた。
「アルバート……!」
エリザベスはアルバートを見るなり、涙ながらに駆け寄った。先程までの態度はどこへやら、一転して弱々しい態度でしなだれかかる。
「プリムローズ様ったらひどいの。フィラグランテの王女であることを笠に着て、わたくしにひどい暴言を……」
「まあ! 我が姫様を一方的に侮辱しておいて、正当な反論をされたら暴言だなどと何て言い草!」
嘘をつくエリザベスにイレーヌは激昂した。
どんな時もイレーヌは味方でいてくれる。そのことに強い喜びを覚えながらプリムローズはやんわりと首を振り、たった一人の味方である彼女を制した。
アルバートは、エリザベスの言い分を信じるのだろう。
だって、本当に結婚したい人だから。
「姫、」
「わたくしが否定したところで、エリザベス様のお味方はそちらの侍女も含めて五人いらっしゃいます。イレーヌしかいないわたくしが何を申し上げようと、信じては下さらないのでしょう?」
五人。
その数字にアルバートが表情を変えた。
エリザベスが連れている侍女は全部で四人だ。数が合わない残りの一人は自分のことを示していると気がついたのだろう。
「申し開きは何も致しません。どうぞエリザベス様の証言を受けて、殿下がご判断なさって下さい。そのご決定に、従いますから」
「姫様……!」
「いいの。行きましょう、イレーヌ」
期待なんてしない。
プリムローズは一行に対して淑女の礼をすると顔を上げたまま、王女らしく毅然とした姿勢を崩さずにその横を通り抜けた。
背中に侮蔑と優越感のこもった強い視線が刺さる。振り向けばきっと、エリザベスは勝ち誇った笑みを浮かべているに違いない。でもプリムローズには勝ち負けなんてどうでも良かった。
「待って下さい、姫。話したいことがあります」
足を止めることも振り返ることもしない。
プリムローズは政略で嫁いで来た、たった一年限りの妻でしかないのだ。
離縁した後にアルバートがどうするつもりでいるのかなんて、聞きたくもない。
「――リジィ!」
後ろから手を掴まれた。
何が起こったのか分からなくて顔を上げる。
真剣な、けれどどこか泣きそうな顔でアルバートがプリムローズの手を掴んでいた。