白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ王女は甘い夜を過ごしたい~【全年齢版】
姫は学ぶ
雲一つない青空の下を、豪奢に飾り立てられた馬車隊が先を進んで行く。
十五台の馬車と総勢七十人にも及ぶ騎兵隊で構成されたそれは、フィラグランテ国第一王女プリムローズが隣国イルダリアに嫁入りする為の一団である。
百年ほど前に両国の間で戦争が勃発し、国同士を繋ぐ道という道は進軍する騎馬兵隊によって等しく無残に踏み荒らされた。
今では全て綺麗に整備し直され、素朴な野花が風に揺れる風景の中に過去の痛ましい出来事の面影はない。両国は民の為に戦争で受けた自らの傷を癒やし、相互理解を深めることに心血を注いでいた。
そして終戦からちょうど百年となる今年、フィラグランテとイルダリア間では初めて、王族に連なる者同士の婚姻が結ばれる運びとなった。
誰がどう見ても政略結婚であることは疑いようもない。
でも、当事者の一人であるプリムローズには理由なんて何だって良かった。
だって夫となるイルダリア王国の王太子アルバートはプリムローズの淡い初恋の相手だ。九歳の頃から恋焦がれる相手の元に嫁げるというのに、何の不満があるだろうか。
「ご覧下さい姫様。国境を越えてイルダリア領内に入りましたよ!」
馬車隊の中心、馬も車体も白で可愛らしく統一された馬車の中で、馬車への同乗を唯一許された第一王女付きの侍女イレーヌが弾んだ声を上げる。
「ええそうね」
「姫様……同じ本を何度読めば気がお済みになられるのですか」
単調な返事を呆れたように咎められるのは、フィラグランテを出てから半日と経っていないのにもう六回目だ。祖国から旅立ち、王都を越えてからというもの、プリムローズは一冊の本をひたすら熱心に読み耽っていた。
正確に言えば、結婚の日取りが決まった半年前から暇さえあれば読んでいる。そのせいで紙はよれよれになっていたり、今にも背表紙から外れそうなページもいくつかあった。できれば新しく買い直したいけれど、この本を融通してくれた従姉いわくもう手に入らない本らしい。
十五台の馬車と総勢七十人にも及ぶ騎兵隊で構成されたそれは、フィラグランテ国第一王女プリムローズが隣国イルダリアに嫁入りする為の一団である。
百年ほど前に両国の間で戦争が勃発し、国同士を繋ぐ道という道は進軍する騎馬兵隊によって等しく無残に踏み荒らされた。
今では全て綺麗に整備し直され、素朴な野花が風に揺れる風景の中に過去の痛ましい出来事の面影はない。両国は民の為に戦争で受けた自らの傷を癒やし、相互理解を深めることに心血を注いでいた。
そして終戦からちょうど百年となる今年、フィラグランテとイルダリア間では初めて、王族に連なる者同士の婚姻が結ばれる運びとなった。
誰がどう見ても政略結婚であることは疑いようもない。
でも、当事者の一人であるプリムローズには理由なんて何だって良かった。
だって夫となるイルダリア王国の王太子アルバートはプリムローズの淡い初恋の相手だ。九歳の頃から恋焦がれる相手の元に嫁げるというのに、何の不満があるだろうか。
「ご覧下さい姫様。国境を越えてイルダリア領内に入りましたよ!」
馬車隊の中心、馬も車体も白で可愛らしく統一された馬車の中で、馬車への同乗を唯一許された第一王女付きの侍女イレーヌが弾んだ声を上げる。
「ええそうね」
「姫様……同じ本を何度読めば気がお済みになられるのですか」
単調な返事を呆れたように咎められるのは、フィラグランテを出てから半日と経っていないのにもう六回目だ。祖国から旅立ち、王都を越えてからというもの、プリムローズは一冊の本をひたすら熱心に読み耽っていた。
正確に言えば、結婚の日取りが決まった半年前から暇さえあれば読んでいる。そのせいで紙はよれよれになっていたり、今にも背表紙から外れそうなページもいくつかあった。できれば新しく買い直したいけれど、この本を融通してくれた従姉いわくもう手に入らない本らしい。