【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。
美香奈は涼介の髪を撫でながら、ふと心の中で思うことがあった。

彼がこんなにも無防備な姿を見せてくれるのは、きっと自分だけだろう。署内ではいつも冷静で、誰にも感情を表に出さない彼が、今はこんなに穏やかで、ただひたすらに安心している。そのギャップが、何だかとても愛おしく感じられる。

「……涼介くん」

美香奈は再び彼の名前を呼びながら、静かな声で問いかけた。

「どうして、そんなに無表情なの?」

涼介の目を開けることなく、ふっと一瞬だけ息を吐いた。

「……表情を作るのが面倒なんだ」

その返事に、美香奈は思わず笑いをこぼしそうになった。

「それって、なんだか男らしいけど……」

涼介は無言で肩をすくめ、再び静かな空気が流れた。美香奈はそのまま涼介の髪を撫で続ける。時折、彼が微かに動くたびに、美香奈の手が彼の頭に優しく触れ、二人だけの時間が少しずつ溶け合っていく。

その静かな時間を心地よく感じながら、美香奈は再び涼介の顔を見つめた。彼の目元はまだ完全にはリラックスしておらず、少しだけ硬さを残しているけれど、それでも美香奈が触れる度に、少しずつその硬さがほぐれていくようだった。

「……美香奈」

突然、涼介が口を開いた。その声には、ほんのりとした眠そうな響きが混ざっていた。

「ん?」

「……もっと、撫でて」

その言葉に、美香奈は驚いたが、すぐに彼のお願いを受け入れるように、ゆっくりと手を動かし始めた。

「こうしてると、涼介くんがすごく可愛く見える」

美香奈は笑いながら言うと、涼介の顔がさらにほころんだように見えた。普段の冷徹な顔からは想像できない、柔らかな表情が少しずつ浮かび上がってくる。それに美香奈は、ますます心が温かくなるのを感じた。

「……可愛くない」

涼介の声がほんのり照れくさそうに響いた。

「うん、可愛いよ。だって、今、すごく幸せそうだもん」

美香奈はその言葉に、もう一度手を優しく動かしながら、涼介の髪に指を絡ませていった。涼介はそのまま、無言で目を閉じて、彼女の手のひらに身を委ねた。

部屋の中に、静かな春の陽だまりが流れ続けていた。
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