【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。
長谷川の八つ当たり
旅行のあとの穏やかな余韻も束の間、
ふたりのもとに、いつもの日常――そして、忙しない現実が戻ってきた。
涼介は連続コンビニ強盗事件の捜査本部に入り、早朝から深夜まで、神経を張り詰めた日々を送っていた。
時には、家に立ち寄るのは着替えの入れ替えだけ。
ゆっくりお風呂に入る暇もないまま、再び署へと戻っていくような、そんな毎日だった。
美香奈はというと、
そんな涼介のためにできることを、静かに続けていた。
彼の部屋に無造作に積まれた洗濯物――脱ぎ捨てられたワイシャツ、くたびれたインナー、少しだけ汗の匂いが残るジャケット。
それらを丁寧に洗い、アイロンをかけ、涼介がすぐ持ち出せるように畳んで整えておく。
「……相変わらず、靴下が片方ずつバラバラ……」
小さく苦笑しながらも、その一足ずつに手を通して畳んでいく美香奈の仕草は、まるでどこか祈るようでもあった。
会えない日々が続いた。
けれど――完全に途切れたわけではなかった。
毎日、夕方になると、5分だけ。
涼介からの電話が鳴る。
《……今、大丈夫か?》
「うん、大丈夫。今日もお疲れさま」
《ありがとう。そっちは、どう?》
「変わりないよ。ちゃんと寝てる?ご飯は……食べた?」
《少しだけ。コンビニのパンと缶コーヒー》
「……うわ、絶対胃やられるやつ……」
短い時間。
ほんのわずかな会話。
けれど、その声を聞くだけで、心がふっとほどける。
《……洗濯、してくれてたろ。ありがとうな》
「うん。次、着替えに来たとき、ちゃんと持ってってね。畳んであるから」
《助かる。……本当は、もう少し話してたいけど》
「知ってる。私も、だよ」
沈黙のあと、微かなため息。
《……じゃあ、また明日な》
「うん。気をつけてね、涼介くん」
電話が切れて、部屋に再び静けさが戻る。
でも、携帯越しに交わされたその声は、確かに、胸の奥に灯り続けていた。
寂しさも、すれ違いも。
きっと、終わりのあるもの。
それをふたりとも信じていた。
ふたりのもとに、いつもの日常――そして、忙しない現実が戻ってきた。
涼介は連続コンビニ強盗事件の捜査本部に入り、早朝から深夜まで、神経を張り詰めた日々を送っていた。
時には、家に立ち寄るのは着替えの入れ替えだけ。
ゆっくりお風呂に入る暇もないまま、再び署へと戻っていくような、そんな毎日だった。
美香奈はというと、
そんな涼介のためにできることを、静かに続けていた。
彼の部屋に無造作に積まれた洗濯物――脱ぎ捨てられたワイシャツ、くたびれたインナー、少しだけ汗の匂いが残るジャケット。
それらを丁寧に洗い、アイロンをかけ、涼介がすぐ持ち出せるように畳んで整えておく。
「……相変わらず、靴下が片方ずつバラバラ……」
小さく苦笑しながらも、その一足ずつに手を通して畳んでいく美香奈の仕草は、まるでどこか祈るようでもあった。
会えない日々が続いた。
けれど――完全に途切れたわけではなかった。
毎日、夕方になると、5分だけ。
涼介からの電話が鳴る。
《……今、大丈夫か?》
「うん、大丈夫。今日もお疲れさま」
《ありがとう。そっちは、どう?》
「変わりないよ。ちゃんと寝てる?ご飯は……食べた?」
《少しだけ。コンビニのパンと缶コーヒー》
「……うわ、絶対胃やられるやつ……」
短い時間。
ほんのわずかな会話。
けれど、その声を聞くだけで、心がふっとほどける。
《……洗濯、してくれてたろ。ありがとうな》
「うん。次、着替えに来たとき、ちゃんと持ってってね。畳んであるから」
《助かる。……本当は、もう少し話してたいけど》
「知ってる。私も、だよ」
沈黙のあと、微かなため息。
《……じゃあ、また明日な》
「うん。気をつけてね、涼介くん」
電話が切れて、部屋に再び静けさが戻る。
でも、携帯越しに交わされたその声は、確かに、胸の奥に灯り続けていた。
寂しさも、すれ違いも。
きっと、終わりのあるもの。
それをふたりとも信じていた。