【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
訓練後の控室。航太は意を決して、同僚の旗野に声をかけた。

「旗野さん、一ノ瀬大臣に、紗良を通さずに……直接連絡する方法ってありますかね?」

旗野は、まるでくだらないことを聞かれたかのように眉をしかめると、即座に一蹴した。

「そんなもんあるわけねえだろ。あの人からの呼び出しは来るけどな、こっちから一ノ瀬大臣に、警護以外の用件で近づくなんて無理に決まってんだろ」

「……ですよね」と、航太は苦笑気味にうなずく。

だが、旗野はそこで話を終えなかった。
口元を少しだけ歪めて、言った。

「用があるなら、正門から行け」

「……それは、つまり——」
航太は念のため確認するように聞き返す。

「大臣室宛に、正式な面会申請を出すってことですか?」

旗野は、鼻で笑うようにして言った。

「そうだ。用があるなら、真正面から行けよ。お前がいつもしてるのって、そういうやり方だろ?」

その言葉に、航太の表情が引き締まった。

旗野は冗談交じりではなく、本気でそう言ったのだ。そして、それが彼なりの背中の押し方でもあった。

——逃げずに、堂々と向き合え。

航太は、自分の心の奥で何をしたいのかをはっきりと自覚し、静かに息を吸った。

「……覚悟を決めるとき、だな」

彼は、真正面から向き合う決意を胸に刻んだ。
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