【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
オフィスで午後の仕事がひと段落した頃、紗良のスマートフォンにメッセージが届いた。
送り主は――航太だった。

《ごめん。昨日の夕方から熱が出てて、今日の昼までずっと寝てた。今は少し楽になったけど、まだ本調子じゃない》

画面を見た瞬間、胸がきゅっと痛む。
昨日、何の連絡もなかったことに少し寂しさを覚えていた自分が、今さらながら恥ずかしくなる。

(そんなに辛かったのに、一言も言わずに……)

即座に返信を打った。

《大丈夫? ちゃんと食べてる? 水分は? 今から行ってもいい?》

しばらくして、「うん、来てくれたらうれしい」という短い返信が届く。
紗良は、すぐに仕事を切り上げてデスクを離れた。

帰り道にスーパーに立ち寄り、レトルトのおかゆ、スポーツドリンク、彼の好きな鶏肉と野菜で作れるスープの材料を手早くカゴに入れる。
レジを済ませ、バッグに詰め込むと、足早に駅へ向かった。

(航太くん、待ってて……)

彼の自宅マンションに着く頃には、もう日が落ちていた。
エントランスでインターフォンを押す。しばらくして、ようやくゆっくりと玄関のドアが開いた――
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