【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です

初夏の風に誓う

そこに立っていたのは、目を赤く腫らし、息を少し荒くした航太だった。
その姿を見た瞬間、紗良の胸がギュッと締めつけられる。

「航太くん……」

靴を脱ぎながら家に上がり込むと、思わず矢継ぎ早に声をかけた。

「大丈夫? 熱は? 食欲ある? ちゃんと水分摂った?」

その勢いに、航太はふっと笑って肩をすくめた。

「大丈夫だよ。ご飯も食べてるし、水分も摂ってる。……紗良とはちがうの」

その言葉に、紗良は少しだけ口元を緩めて、安心したように彼をソファへ促した。
航太が腰を下ろすと、紗良はそっと彼の額に手を当て、自分の額と比較するように額を寄せた。

「熱、あるよ。……38℃行ったり来たりって言ってたけど、大したことあるんだからね」

「そっか。俺、頑張りすぎたかな」

航太がぽつりと漏らすと、紗良は優しく微笑みながら頷いた。

「うん、頑張りすぎ。私も負担かけちゃってたし……ごめんね。でも今日は、私が看病する番だから。航太くんはおとなしく寝てて」

そう言い残して、紗良はキッチンへと向かう。

少しして、紅茶の香ばしい香りとともに彼女が戻ってきた。
「ノンカフェインの紅茶、あったよ。蜂蜜も入れてあげる」

お盆には、温かい紅茶のカップと蜂蜜の瓶。
カップを受け取ると、航太は少し力なく笑って「ありがとう」と言った。

その言葉を聞いた紗良は、満足そうにふわっと微笑んだ。
まるで、彼の痛みごと包み込むように。
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