【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
航太は、紅茶にそっと口をつけ、温かな香りを喉の奥へ流し込んだ。
しばらく黙っていたが、ふと顔を上げて、紗良を見つめた。

「紗良、クルーズ船の旅、いつ行く? 10日間も休み、取れそう?」

紗良は少し考えてから、にこっと笑って答えた。

「私はね、10日くらいなら有給ちゃんとあるから大丈夫だよ。航太くんは?」

「今ちょうど警護担当も外れてるし、新人警護官も無事試験終えて現場に送り出したところだから。……来月なら、行けるよ」

その言葉に、紗良の目がぱっと輝いた。

「そんなすぐ!? 嬉しい!」

思わず身体ごと浮き上がりそうな勢いで喜んでから、すぐにハッと我に返る。

「……でも、今は風邪を治さなきゃだよ」

そう言って、紗良は航太の頭をに手を添えて、ぽんぽんと優しく撫でた。

その仕草があまりにも愛おしくて、航太はゆっくりと彼女を腕の中に引き寄せた。

「……充電させて。紗良を充電したら、治る気がするから」

彼の声は、少しだけ掠れていて、それでもどこまでも優しかった。
紗良はそのまま静かに航太の胸に顔を寄せ、しばらく何も言わず、彼の鼓動を感じていた。
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