【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
大臣執務室の奥にある、警護官専用の控室。
午後の業務の合間を縫って、旗野と村上は一息ついていた。
小さなテーブルに紙コップのコーヒーを置き、スーツの上着を軽く脱いだ旗野が、ふと視線を横に向けて口を開いた。
「なあ、村上。……この前、紗良さんの補助警護に入っただろ。どうだった?」
村上は少し驚いたように目を瞬かせたが、すぐに姿勢を正し、真面目な口調で答えた。
「……正直、驚きました。現場で、あんなふうに警護対象に直接的な接触が起きたのは初めてで。訓練では想像してたつもりだったんですけど、やっぱり実際の現場は、全然違っていて……」
彼女は言い淀んだあと、少しだけ視線を伏せてつぶやいた。
「一瞬……凶器を前にして、足がすくんでしまって。動けなくなる感覚って、ああいうことなんだって、思い知りました」
旗野は苦笑しながらも、軽くうなずいた。
「まぁ、そんなもんだよ。最初のうちは色んなケースにぶつかって、とにかく冷静さをどれだけ保てるか、そこが勝負になる」
そして、コーヒーをひと口啜ってから、柔らかい声で続けた。
「……橘や松浦を見てればわかるだろ。あの二人、対象者の不安にもちゃんと寄り添ってる。警護官の仕事って、ただ身体張るだけじゃなくて、心のケアも必要なんだよ。いずれ、村上にもわかるようになるさ」
村上は黙ってうなずいた。どこか、自分の中の悔しさを抱え込んでいるようだった。
旗野は少しおどけたような調子で、肩をすくめて言った。
「ま、でもな。一ノ瀬大臣は――あの人、多少襲われても、平気な顔してるしな。実際、ほんとに平気らしい。あれじゃ、心のケアの練習にもならん」
そう言って笑うと、村上も思わずふっと笑みをこぼした。
その笑みには、少しだけ緊張が解けた新任の面影と、先輩への信頼が滲んでいた。
午後の業務の合間を縫って、旗野と村上は一息ついていた。
小さなテーブルに紙コップのコーヒーを置き、スーツの上着を軽く脱いだ旗野が、ふと視線を横に向けて口を開いた。
「なあ、村上。……この前、紗良さんの補助警護に入っただろ。どうだった?」
村上は少し驚いたように目を瞬かせたが、すぐに姿勢を正し、真面目な口調で答えた。
「……正直、驚きました。現場で、あんなふうに警護対象に直接的な接触が起きたのは初めてで。訓練では想像してたつもりだったんですけど、やっぱり実際の現場は、全然違っていて……」
彼女は言い淀んだあと、少しだけ視線を伏せてつぶやいた。
「一瞬……凶器を前にして、足がすくんでしまって。動けなくなる感覚って、ああいうことなんだって、思い知りました」
旗野は苦笑しながらも、軽くうなずいた。
「まぁ、そんなもんだよ。最初のうちは色んなケースにぶつかって、とにかく冷静さをどれだけ保てるか、そこが勝負になる」
そして、コーヒーをひと口啜ってから、柔らかい声で続けた。
「……橘や松浦を見てればわかるだろ。あの二人、対象者の不安にもちゃんと寄り添ってる。警護官の仕事って、ただ身体張るだけじゃなくて、心のケアも必要なんだよ。いずれ、村上にもわかるようになるさ」
村上は黙ってうなずいた。どこか、自分の中の悔しさを抱え込んでいるようだった。
旗野は少しおどけたような調子で、肩をすくめて言った。
「ま、でもな。一ノ瀬大臣は――あの人、多少襲われても、平気な顔してるしな。実際、ほんとに平気らしい。あれじゃ、心のケアの練習にもならん」
そう言って笑うと、村上も思わずふっと笑みをこぼした。
その笑みには、少しだけ緊張が解けた新任の面影と、先輩への信頼が滲んでいた。