【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です

“見そめられた”恋、堂々交際中!

杉浦との再会は、渋谷の落ち着いたカフェの片隅だった。
平日昼間のカフェは空いていて、静かなジャズが流れている。
航太はスーツではなく、私服に薄手のジャケットを羽織っていた。

「久しぶり」と先に座っていた杉浦が軽く手を上げる。

「ほんとにな。医者時代の友達に何人か連絡したら、返事くれたの、お前だけだったわ」と笑って言う航太に、杉浦は苦笑した。

「そりゃあ勤務医は忙しいからな。……で? 我らの異端児・橘航太くんは暇なのか?」

「束の間の休暇中。つい数日前までアメリカの国連サミットに同行してた」

「へぇ」と杉浦は興味なさそうにカップを傾けたあと、ふと意味ありげな視線を向けてきた。

「でさ、航太。一ノ瀬大臣の娘と付き合ってるって、ほんとなの?」

「……なんで知ってんだよ」

「いや、知らないやついないでしょ」
杉浦はニヤリと笑って、ストローでアイスコーヒーをくるくるとかき混ぜた。

「お前……紗良さんに見そめられたんだな?」

からかうような口調に、航太は少し肩をすくめ、目を細めた。

「――ああ、そうだよ。見そめられたんだ。……なんか、問題でも?」

その言い方は、どこか誇らしく、けれど静かな熱を孕んでいた。

杉浦は意外そうに目を瞬かせると、「へぇ、そりゃあ本気っぽいな」とつぶやいた。
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