【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
着替えを終えた航太は、更衣室の一角にある長椅子に腰を下ろした。
汗ばむ額をタオルで拭いながら、思考の渦に静かに沈み込んでいく。
――鶴田悠真。自己炎症性疾患の第一人者であり、今や衆議院議員。
メールの返信内容は実質的な門前払い。
問い合わせのルートは断たれたも同然だった。
「……他に、接触できる手段は」
医師として研修を受けていたころの記憶、同僚医師、上司、学会関係の人脈――
ひとつひとつ思い返すが、誰も鶴田と直接の接点はない。
政治の世界に人脈があるわけでもない。
一度、手の中のスマホを見つめ、唇を噛んだ。
そのとき、脳裏にふと紗良の顔が浮かぶ。
優しく笑う、彼女のあの表情。
そしてその直後に――ひらめいた。
「……一ノ瀬大臣」
思わず小さく呟いていた。
鶴田悠真は、直近の衆議院選で与党から出馬し、当選している。
一ノ瀬岳、大臣であり、紗良の父。
鶴田と同じ政党に属しているなら、何らかのパイプは持っているはずだ。
そして何より――
「岳さんなら……絶対に動く」
航太はそう確信した。
世間のイメージとは裏腹に、あの男は、娘・紗良のこととなると理屈を飛び越えて動く。
政敵が相手であってもだ。
「……このルートしかない」
そう心に決めると、航太は深くひとつ呼吸をして、立ち上がった。
ただの医師でも警護官でも辿り着けない場所に、今の自分には”家族”という立場がある――
そして、紗良のためなら、躊躇する理由は何もなかった。
汗ばむ額をタオルで拭いながら、思考の渦に静かに沈み込んでいく。
――鶴田悠真。自己炎症性疾患の第一人者であり、今や衆議院議員。
メールの返信内容は実質的な門前払い。
問い合わせのルートは断たれたも同然だった。
「……他に、接触できる手段は」
医師として研修を受けていたころの記憶、同僚医師、上司、学会関係の人脈――
ひとつひとつ思い返すが、誰も鶴田と直接の接点はない。
政治の世界に人脈があるわけでもない。
一度、手の中のスマホを見つめ、唇を噛んだ。
そのとき、脳裏にふと紗良の顔が浮かぶ。
優しく笑う、彼女のあの表情。
そしてその直後に――ひらめいた。
「……一ノ瀬大臣」
思わず小さく呟いていた。
鶴田悠真は、直近の衆議院選で与党から出馬し、当選している。
一ノ瀬岳、大臣であり、紗良の父。
鶴田と同じ政党に属しているなら、何らかのパイプは持っているはずだ。
そして何より――
「岳さんなら……絶対に動く」
航太はそう確信した。
世間のイメージとは裏腹に、あの男は、娘・紗良のこととなると理屈を飛び越えて動く。
政敵が相手であってもだ。
「……このルートしかない」
そう心に決めると、航太は深くひとつ呼吸をして、立ち上がった。
ただの医師でも警護官でも辿り着けない場所に、今の自分には”家族”という立場がある――
そして、紗良のためなら、躊躇する理由は何もなかった。