【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
首相官邸の一角にある大臣執務室。
時計の針は午後9時を回っていた。
ドアが静かに開き、黒のジャケットを羽織った橘航太が姿を現す。
「遅くに申し訳ありません、一ノ瀬大臣」
一ノ瀬岳はソファに座ったまま軽く手を上げた。
「いや、こちらこそ。わざわざ来てもらってすまない。」
その言葉と同時に、部屋の隅に控えていた警護官に目で合図を送る。
無言で頷いた警護官――遠藤は、静かに部屋を出て行った。
重いドアが閉まる音が響くと、一ノ瀬はふうと息を吐き、橘の方に目を向けた。
「娘の件……ありがとうね」
「君がいなかったら、私も、ずっと気づかずにいたと思う」
その声は、政治家としての堅さではなく、父親としての静かな感謝が滲んでいた。
橘はゆっくりとソファに腰を下ろし、やや視線を落として答える。
「紗良さんは……隠したり我慢するのが上手な方です。私も、まさか警護中に高熱を隠して出勤していたとは……つい最近聞かされたばかりで」
一ノ瀬は一瞬だけ眉を下げ、遠くを見るように天井へ目を向けた。
「……いや、私が色々と我慢させたんだろう」
その声は、過去への悔いと、親としての責任感が滲んでいた。
橘は黙ってその言葉を受け止めた。
立場は違えど、2人が見ている“紗良”という存在に、どこか重なる思いがあることを、互いに感じていた。
時計の針は午後9時を回っていた。
ドアが静かに開き、黒のジャケットを羽織った橘航太が姿を現す。
「遅くに申し訳ありません、一ノ瀬大臣」
一ノ瀬岳はソファに座ったまま軽く手を上げた。
「いや、こちらこそ。わざわざ来てもらってすまない。」
その言葉と同時に、部屋の隅に控えていた警護官に目で合図を送る。
無言で頷いた警護官――遠藤は、静かに部屋を出て行った。
重いドアが閉まる音が響くと、一ノ瀬はふうと息を吐き、橘の方に目を向けた。
「娘の件……ありがとうね」
「君がいなかったら、私も、ずっと気づかずにいたと思う」
その声は、政治家としての堅さではなく、父親としての静かな感謝が滲んでいた。
橘はゆっくりとソファに腰を下ろし、やや視線を落として答える。
「紗良さんは……隠したり我慢するのが上手な方です。私も、まさか警護中に高熱を隠して出勤していたとは……つい最近聞かされたばかりで」
一ノ瀬は一瞬だけ眉を下げ、遠くを見るように天井へ目を向けた。
「……いや、私が色々と我慢させたんだろう」
その声は、過去への悔いと、親としての責任感が滲んでいた。
橘は黙ってその言葉を受け止めた。
立場は違えど、2人が見ている“紗良”という存在に、どこか重なる思いがあることを、互いに感じていた。