【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
「さて――早速だが、鶴田先生の件だ」
一ノ瀬は机の上に置かれた手帳をぱらぱらとめくりながら言った。
「明日、新人議員の勉強会がある。鶴田も出席する予定だ。その場で私から直接話ができるよう、本人に“私に声をかけるように”と伝えておいた」
橘は思わず驚いた顔で一ノ瀬を見る。
「すでに手筈を整えてくださったんですね……」
「うん。私からの頼みなら、二つ返事で受けるだろうな」
一ノ瀬は少し得意げに、だがどこか照れたように笑った。
「それで問題ないか?」
「はい……」
橘は深く頭を下げると、安堵したように柔らかく笑った。
「十分すぎるくらいです。本当に、ありがとうございます」
一ノ瀬はその笑みを見つめながら、ふっと視線を落とし、しばし黙った。
静かな時間が流れ、彼はソファの背にもたれかかりながら、ゆっくりと口を開いた。
「大学の頃から……高熱を出してたとはな」
その声は、どこか自分自身に言い聞かせるような、呟きだった。
「……あの頃、母さんも長期入院していた。私は頻繁に病院へ見舞いに行っていたが、紗良は……そんな素振り、一切見せなかった」
橘は、静かに小さく頷いた。
その仕草には、すべてを肯定する優しさが滲んでいた。
「本当に、私はあの子のことを……何も見ていなかったんだな」
「自分が大臣に任命されて、舞い上がって……家にもろくに帰らず、政務に没頭していた」
「……情けない父親だよ」
その言葉には、政治家ではなく、一人の父としての痛切な思いが込められていた。
橘は、ほんの一瞬だけ言葉を探したあと、ゆっくりと声を出した。
「でも、今こうして紗良さんのために動いてくださっている。それだけで、きっと、彼女には伝わります」
その言葉に、一ノ瀬はふっと笑い、ほんの少しだけ目を潤ませた。
一ノ瀬は机の上に置かれた手帳をぱらぱらとめくりながら言った。
「明日、新人議員の勉強会がある。鶴田も出席する予定だ。その場で私から直接話ができるよう、本人に“私に声をかけるように”と伝えておいた」
橘は思わず驚いた顔で一ノ瀬を見る。
「すでに手筈を整えてくださったんですね……」
「うん。私からの頼みなら、二つ返事で受けるだろうな」
一ノ瀬は少し得意げに、だがどこか照れたように笑った。
「それで問題ないか?」
「はい……」
橘は深く頭を下げると、安堵したように柔らかく笑った。
「十分すぎるくらいです。本当に、ありがとうございます」
一ノ瀬はその笑みを見つめながら、ふっと視線を落とし、しばし黙った。
静かな時間が流れ、彼はソファの背にもたれかかりながら、ゆっくりと口を開いた。
「大学の頃から……高熱を出してたとはな」
その声は、どこか自分自身に言い聞かせるような、呟きだった。
「……あの頃、母さんも長期入院していた。私は頻繁に病院へ見舞いに行っていたが、紗良は……そんな素振り、一切見せなかった」
橘は、静かに小さく頷いた。
その仕草には、すべてを肯定する優しさが滲んでいた。
「本当に、私はあの子のことを……何も見ていなかったんだな」
「自分が大臣に任命されて、舞い上がって……家にもろくに帰らず、政務に没頭していた」
「……情けない父親だよ」
その言葉には、政治家ではなく、一人の父としての痛切な思いが込められていた。
橘は、ほんの一瞬だけ言葉を探したあと、ゆっくりと声を出した。
「でも、今こうして紗良さんのために動いてくださっている。それだけで、きっと、彼女には伝わります」
その言葉に、一ノ瀬はふっと笑い、ほんの少しだけ目を潤ませた。