【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
次の日の夜。
定時で仕事を終えた2人は、待ち合わせもせず、自然と紗良の部屋で合流した。
部屋の中央に置かれた丸いテーブルをはさんで、向かい合って座る。
ソファではなく、あえて椅子に座るあたりに、今日の話の重さがうかがえた。
湯気の立つミントティーを一口飲んだあと、航太が口を開いた。
「紗良、次に熱が出たら……鶴田先生のところに、診察を受けに行こう」
不意を突かれたように、紗良の目が見開かれる。
「えっ……もう鶴田先生と話、できたの?」
航太は小さく首を横に振りながら、やわらかく微笑んだ。
「いや、この前……お父さんと話してさ」
「それで、お父さんが鶴田先生に頼んでくれた。そしたら“いつでも良いですよ”って言ってくださったみたいで」
「へえ……」
紗良は、ちょっと呆れたような顔で笑い、それから目を細めた。
「お父さんの……権力、半端ないな」
思わずこぼれた本音だった。
いつもは「父の肩書」が重苦しく、自分を縛る鎖のように感じていた。
でも今は違った。
初めて、個人的に――心から、父の存在に「価値」を感じた。
「……なんか、変な感じ。これが親ってやつなのかな」
航太は、黙って頷いた。
少しだけ緊張していた表情が、ふっと緩み、安心したように息を吐く。
その顔を見ていた紗良は、思わず立ち上がっていた。
彼の背後にまわり、何も言わず、そっと両腕を後ろから回す。
「橘先生、ありがとう」
少しだけ甘えたような声で囁きながら、ぴたりと彼の背中に額を当てる。
「頼りになるんだから……」
航太はそのまま、少しだけ首を傾けて、彼女の腕の中の温もりを感じた。
「……頼られるの、悪くないな」と、小さく呟いた。
定時で仕事を終えた2人は、待ち合わせもせず、自然と紗良の部屋で合流した。
部屋の中央に置かれた丸いテーブルをはさんで、向かい合って座る。
ソファではなく、あえて椅子に座るあたりに、今日の話の重さがうかがえた。
湯気の立つミントティーを一口飲んだあと、航太が口を開いた。
「紗良、次に熱が出たら……鶴田先生のところに、診察を受けに行こう」
不意を突かれたように、紗良の目が見開かれる。
「えっ……もう鶴田先生と話、できたの?」
航太は小さく首を横に振りながら、やわらかく微笑んだ。
「いや、この前……お父さんと話してさ」
「それで、お父さんが鶴田先生に頼んでくれた。そしたら“いつでも良いですよ”って言ってくださったみたいで」
「へえ……」
紗良は、ちょっと呆れたような顔で笑い、それから目を細めた。
「お父さんの……権力、半端ないな」
思わずこぼれた本音だった。
いつもは「父の肩書」が重苦しく、自分を縛る鎖のように感じていた。
でも今は違った。
初めて、個人的に――心から、父の存在に「価値」を感じた。
「……なんか、変な感じ。これが親ってやつなのかな」
航太は、黙って頷いた。
少しだけ緊張していた表情が、ふっと緩み、安心したように息を吐く。
その顔を見ていた紗良は、思わず立ち上がっていた。
彼の背後にまわり、何も言わず、そっと両腕を後ろから回す。
「橘先生、ありがとう」
少しだけ甘えたような声で囁きながら、ぴたりと彼の背中に額を当てる。
「頼りになるんだから……」
航太はそのまま、少しだけ首を傾けて、彼女の腕の中の温もりを感じた。
「……頼られるの、悪くないな」と、小さく呟いた。