【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
背後から紗良が抱きしめたその空気が、次の瞬間、ピシッと張りつめた。

「――ところで、紗良」

航太が、ふと少し低い声で口を開いた。

「最近、コンビニばっかりじゃない?」

その言葉に、まるで“グキッ”という音が首から鳴ったかのような勢いで、紗良が反応した。

「……っ!?」

一瞬で心拍が跳ね上がる。

(なんで……なんで知ってるの?)

頭の中で、記憶を巻き戻す。

あ――!
朝、出がけに慌てて片づけたゴミ箱。
奥に押し込んだスイーツの空袋、カップ麺のフタ、コンビニ弁当の帯……。

(隠蔽工作が、甘かった……!)

「え、えーと、それは……っ」

しどろもどろに言い訳を考える紗良に、航太は振り返りながら、静かに、でも逃げ場のない声で言った。

「――はい。向こうの椅子に戻って、座りなさい」

その声が、“警護官モード”特有の有無を言わせぬものだと分かって、紗良は肩を落とす。

「……はい……」

しゅんとした様子で、再び椅子に座り直す。

すると航太は、腕を組み、テーブル越しにまっすぐ目を合わせてきた。

「自炊をする余裕がない日があるのは分かってる。でも、身体のためって言ってサプリ飲んでるくせに、毎日コンビニ弁当じゃ意味ないでしょ?」

「うぅ……」

「しかも、病院に行かずに熱を誤魔化してたって、自分で言ってたよね? 解熱剤とコンビニ飯で体調管理できるって、本気で思ってたの?」

「……うう……思ってない……けど……」

「だったら、せめて週に一回でもいい。ちゃんとしたものを食べる日、作って?」

「……はーい……」

目を伏せてしゅんとする紗良に、航太はようやく表情を緩め、少しだけ笑った。

「……素直に反省してる紗良は、けっこう好きだけどね」

その一言に、紗良は一瞬だけ目を見開き――頬をふわりと赤く染めた。
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