【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
「……はい、終わり」

最後の一束まで丁寧に乾かし終え、航太がドライヤーのスイッチを切ると、ソファに座ったままの紗良がくるりと振り返った。

「ありがと、橘先生」

「うん。じゃあ——対価、払ってもらおうかな」

「えっ、おいくらですか〜?」
紗良がわざとおどけたように言うと、航太はすっと手を伸ばして、紗良の髪をさらりと持ち上げた。

そのまま、手で軽く顎を取るようにして紗良の頬を横に向けると、迷いもなく——唇を、そっと添えるように落とした。

一瞬のことで、ふっと息を呑んだ紗良が目を見開く。

「……あっ、ずるい」

小さな声で文句を言うと、航太はそれを聞いてニヤッと一瞬だけ笑い、すぐに立ち上がる。

「ドライヤー戻してくる」

そう言って、そそくさと洗面所へ歩いていく航太の背中を、紗良はぼんやりと見つめた。

静かにその場に残された紗良は、自分の唇にそっと指先を当てる。

触れた場所にまだ温もりが残っていて、ふふっと、ひとりごとのように小さく笑った。
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