【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
検査からおよそ20分後。

再び診察室に戻ると、鶴田はすでにデータの一覧に目を通していた。
カルテの横に置かれた手書きのメモには、要所だけが簡潔にまとめられている。

「……やっぱり、いくつか気になる数値が出ていますね」

鶴田はそう言いながら、印刷された検査結果を指でなぞるようにしながら、説明を始めた。

「炎症反応、特にCRPとSAAがかなり高い。白血球数も上昇しています。急性感染症というよりは、慢性的な炎症や、自己炎症性疾患を疑いたくなる数値です」

航太はそれを聞いて小さく息をのむ。
紗良は隣で目を閉じていたが、言葉は耳に入っているようだった。

鶴田は、視線を2人に向けた。

「この結果を踏まえて、追加で一つ検査をお願いしたいんです。アミロイドタンパク質の沈着を確認する検査です。専門的には『腹壁脂肪生検』といって、お腹の皮下脂肪から少量組織を採取して、顕微鏡でアミロイド沈着を確認します」

そして、航太に向かって補足する。

「自己炎症性疾患の一部、たとえば家族性地中海熱などは、繰り返す高熱だけでなく、慢性的な炎症が長引くことで臓器にアミロイドが沈着してしまうことがあるんです。これが進むと腎不全など重大な合併症につながることもあるので、念のため早期に確認しておきたい」

紗良は薄く目を開け、弱々しく鶴田の言葉を追っていたが、その意味すべてを理解できたかどうかはわからない。

「今日は体調も優れないでしょうから、無理にとは言いません。日を改めてで大丈夫です。紗良さんが元気なタイミングで、また来てくだされば」

鶴田はそう優しく声をかけながら、2人の様子を静かに見守っていた。
< 72 / 126 >

この作品をシェア

pagetop