【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
命を守る、その一歩のために
春の風がわずかに吹き込む屋外訓練場。
午前9時、橘航太は既に黒い訓練服に身を包み、仲間たちと整列していた。
松浦、河田、そして新人警護官の男女7人。
緊張とやる気の入り混じる空気の中、橘が一歩前に出て声をかける。
「今日は対人接近時の動線確認と、基礎的な護衛姿勢の再確認だ。最終試験前の大事な訓練だと思って、集中して取り組んでくれ」
「はいっ!」と新人たちの声が揃う。
まず行われたのは「接近時の展開訓練」。
想定は——要人が歩いている際、背後から不審人物が接近するというもの。
松浦が要人役を務め、橘がその左後方、河田が右斜め後ろに立つ。
新人たちは一人ずつ、動線確保・不審者の排除・要人の退避という一連の動きを体に叩き込む。
橘は鋭い視線で全体を見渡しながら、必要に応じて瞬時に指示を飛ばす。
「相手の利き手は? どこから刃物が出てくる可能性があるか——目線で読むんだ」
「手を止めるな。押すときは一瞬、ためらったら逆に危ない」
一人の新人男性が一歩遅れて動いたとき、橘は間髪入れずに前へ出た。
「交代」
静かな声が、しかし確実に空気を変える。
「焦らなくていい。だがな、現場で失敗するくらいなら、ここで死ね。そのくらいのつもりでやれ」
一瞬、場が静まりかえる。だがその言葉の重みが、確実に隊員たちの目を変えた。
河田は隊列に入り込み、新人の肩をぐっと押して立ち位置を修正しながら言う。
「そっちは空けるな、隙間作るな、もっと左寄れ!」
松浦も、背後から回り込みながら声をかける。
「そこに立つと要人の動線が潰れる。少し前、そう——その位置」
午後は屋内訓練へ。
狭い廊下や会議室を模した空間での要人退避訓練が始まる。
訓練用の銃を装備し、制限時間内で標的(不審者)を制圧しつつ、要人を無事に安全ルートへ導く。
「三角構え、忘れてる! 背中が空いてるよ!」と松浦が声を上げ、
河田がすかさず間に入り、新人の身体を押し込むようにして動線を補正する。
一人の新人女性が動揺して転倒しそうになったとき、橘がすっと駆け寄り、腕を支える。
「ミスを恐れるな。俺たちは“想定外”に慣れるためにここにいる。次、同じ場面でどう動くか考えろ」
その言葉に、彼女は深く頷き、拳を握り直した。
訓練の最後、全員が整列すると、橘が再び前に出た。
「この訓練を経て、次はいよいよ最終試験だ。現場に立つというのは、要人の命を預かる立場に立つということ。自信を持って臨め」
「はい!」と声が響き、誰の表情にももう迷いはなかった。
——数日後、彼らは厳しい最終試験に挑むことになる。
午前9時、橘航太は既に黒い訓練服に身を包み、仲間たちと整列していた。
松浦、河田、そして新人警護官の男女7人。
緊張とやる気の入り混じる空気の中、橘が一歩前に出て声をかける。
「今日は対人接近時の動線確認と、基礎的な護衛姿勢の再確認だ。最終試験前の大事な訓練だと思って、集中して取り組んでくれ」
「はいっ!」と新人たちの声が揃う。
まず行われたのは「接近時の展開訓練」。
想定は——要人が歩いている際、背後から不審人物が接近するというもの。
松浦が要人役を務め、橘がその左後方、河田が右斜め後ろに立つ。
新人たちは一人ずつ、動線確保・不審者の排除・要人の退避という一連の動きを体に叩き込む。
橘は鋭い視線で全体を見渡しながら、必要に応じて瞬時に指示を飛ばす。
「相手の利き手は? どこから刃物が出てくる可能性があるか——目線で読むんだ」
「手を止めるな。押すときは一瞬、ためらったら逆に危ない」
一人の新人男性が一歩遅れて動いたとき、橘は間髪入れずに前へ出た。
「交代」
静かな声が、しかし確実に空気を変える。
「焦らなくていい。だがな、現場で失敗するくらいなら、ここで死ね。そのくらいのつもりでやれ」
一瞬、場が静まりかえる。だがその言葉の重みが、確実に隊員たちの目を変えた。
河田は隊列に入り込み、新人の肩をぐっと押して立ち位置を修正しながら言う。
「そっちは空けるな、隙間作るな、もっと左寄れ!」
松浦も、背後から回り込みながら声をかける。
「そこに立つと要人の動線が潰れる。少し前、そう——その位置」
午後は屋内訓練へ。
狭い廊下や会議室を模した空間での要人退避訓練が始まる。
訓練用の銃を装備し、制限時間内で標的(不審者)を制圧しつつ、要人を無事に安全ルートへ導く。
「三角構え、忘れてる! 背中が空いてるよ!」と松浦が声を上げ、
河田がすかさず間に入り、新人の身体を押し込むようにして動線を補正する。
一人の新人女性が動揺して転倒しそうになったとき、橘がすっと駆け寄り、腕を支える。
「ミスを恐れるな。俺たちは“想定外”に慣れるためにここにいる。次、同じ場面でどう動くか考えろ」
その言葉に、彼女は深く頷き、拳を握り直した。
訓練の最後、全員が整列すると、橘が再び前に出た。
「この訓練を経て、次はいよいよ最終試験だ。現場に立つというのは、要人の命を預かる立場に立つということ。自信を持って臨め」
「はい!」と声が響き、誰の表情にももう迷いはなかった。
——数日後、彼らは厳しい最終試験に挑むことになる。