【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
控室の片隅で装備の片付けを終えた三浦は、ふとタイミングを見て松浦に声をかけた。

「松浦さん」

「ん?」

松浦が顔を上げると、三浦は少しだけはにかんだように笑った。

「僕……訓練生の頃は、正直、自分が本当に警護官になっていいのか、自信が持てなかったんです。現場の空気にも、人の命を預かる責任にも、押し潰されそうで」

松浦は黙って耳を傾けている。

「でも、今日、初めて……ほんの少しだけですけど、手応えみたいなものを感じられた気がして。松浦さんと橘さんの、厳しくて、でも的確な指導があったからこそだと思います。本当に、ありがとうございます」

真っ直ぐな眼差しで頭を下げる三浦に、松浦は一瞬目を丸くして、それからふっと優しく笑った。

「三浦くん、あんたねえ……そんな真面目なこと言うと泣きそうになるからやめてよ」

少し茶化すように言ってから、彼女も真面目な声に戻す。

「ちゃんと自分で努力したから、今日の結果があるんだよ。私たちは、その背中をちょっと押しただけ。……でもね、まだまだここから。現場は甘くない。だけど、あなたなら大丈夫だと思ってるよ」

「……はい!」

三浦の声は、以前よりも一段しっかりしていた。

松浦はその成長の一歩を、確かに感じ取っていた。
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