私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
「貴様になど、会いに来なければよかった! こんな惨めな気持ちを味わい続けるくらいなら、消えたほうが……」
「そんなの、冗談でも言わないでよ」

 自分でもわけがわからなくなり、心の奥底に留めていた感情を勢いよく吐き出せば。
 ――何を思ったのか。
 エルネットは優しく、俺の指先に触れた。

「ちょっと一回、落ち着こう?」
「う……っ」

 指先から感じるぬくもりが、みるみるうちに身体の隅々まで伝達していく。
 ――この暖かさを、望めばいつでも手に入れるなんて。アルベールはずるい。

「初めまして! 私はエルネット・ヨトシーハ! 公爵家の娘だよ」

 太陽のように明るい性格。
 整った容姿。
 どれほど醜い行動をしても、何度も手を差し伸べてくれる。
 その優しさに心を囚われた俺は――この子を独り占めしたいと、仄暗い感情に支配された。

「教えてよ。なんて名前なの?」
「お、俺は……」

 今すぐに、俺の名前を呼んでほしい。
 このまま触れ合った手を握り返して、誰も手の届かぬところに監禁したい。

 ――そんな邪な願望は、叶えられなかった。

「レオドール様!」

 ガデムが俺の異変を察知して、声をかけてきたからだ。

 ――我に返り、慌てて彼女から手を離す。
 俺は魔術師とともに、彼女の元から逃げ出した。
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