私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
「ぐ……っ」

 ――抵抗しなきゃ。
 なんでもいいから、魔術を発動しないといけないのに。
 意識が遠のいて、中途半端な術式だけが頭の中に浮かんでは消えていく。

「エルネット!」

 誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。
 ラボ長? それとも……。

 ――あいつなわけ、ないよね。
 ここにいるはずがないもん。
 レオドールは、殆ど現場に出てこない。
 騎士団の団員達を纏め上げるのだけで、手一杯だから。

 ――ああ、でも……。
 私を守るって、大口叩いてたわけだし……。
 あいつにとって私は、愛する人なわけでしょ?
 大ピンチに駆けつけて、覆い被さる男性を退けてくれたら。

 ――大嫌い、だったけど。
 惚れちゃうかも、しれないなぁ……。

「ぅ……っ。ぐ……っ。れ、……ど、る……」

 こんなところで死ぬなら、あいつに意地悪なんてしなきゃよかった。
 はっきり断っておけば、愛する人を失うトラウマを植えつけなくて済んだのにね。

 ――ごめん。

 面と向かって謝れなかったことを心の中で謝罪した私は、呼吸が止まるその瞬間まで。
 頭の中がレオドールで一杯になっている自分に気づかされて――。
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