私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
「ちょ、ち、近……」
「目を逸らすな。俺を見ろ」
「で、でも……」
「恥ずかしがる必要が、どこにある」
「だ、だって……」
「俺の顔に、惚れたか」

 なんでこいつは私の言い当ててほしくない感情を、次々に指摘して来るのだろうか? それさえなければ、もっと早く素直になれたのに。

「は、離れてよ……! そんなわけ、ないんだから……!」

 自意識過剰なところが好きだって、言えたらよかったんだけどなぁ……。
 さすがにそこまでは気を許せず、彼から離れるためにグイグイと両手で胸元を押した。

「素直じゃないな」
「照れ隠しなんかじゃ、ないし!」
「強がったところで、俺には無意味だ」
「これのどこが……」
「エルネット」

 紫色の瞳が、こちらをじっと見つめている。
 先程までの生真面目な表情は、どこへ置いて来たのだろうか。
 目元を優しく和らげると、私の腰を抱く。

「な、何……。急に、改まって……」

 セクハラかと一瞬身構えたが、どうやらそうではないらしい。
 それに気づけたのは、オーケストラの生演奏が始まったからだ。
 どこからともなく聞こえてくる美しい音色を耳にした貴族達は、パートナーと手を取り合いダンスフロアへと集まり始めていた。
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