私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
「レオドール!」

 どうしようかと、焦燥感に苛まれた直後。
 大声で弟の名を呼んだアルベールは、入口から勢いよく鞘に納められた愛剣をぶん投げた。

「ひゃあ!」

 細長い剣がまるでアーチェリーの矢みたいに、持ち主の元へと飛んでいく。
 彼と背中合わせに立っていた私は、慌てて悲鳴を上げてその場にしゃがみ込む。

「貴様から、剣を受け取ることになるとはな……」

 レオドールは忌々しそうに呟きながらそれを片手で受け取ると、慣れた手つきで腰元にホルダーを装着しーー貴族達に纏わりついた黒い靄を一刀両断し始めた。

 ちょ、ちょっと待って! これなら、こんな複雑な黒魔術払いを展開しなくてよかったよね!? 

 私は慌ててオーバーキルになりそうな部分の術式を切り離し、再構築を始める。

「エルネット!」

 軽やかに宙を舞い、剣を振るうレオドールに目を奪われる時間などーー残念ながら残されていなかった。

「任せて! エルネ・アレ!」

 こうして私は転移魔法を発動できる程度の魔力を残し、黒魔術に侵された人々の浄化を完了させた。
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