私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
「お、お姉さま、とは……?」
「許嫁は、解消してきた」
「どう、して……」
「いろいろあってね」

 どこか疲れたように口元を綻ばせながら。
 肩を竦めた、愛する人の姿を目にしたわたしは――。
 お姉さまはなんて酷い人なのだろうかと激昂した。

 わたしの大好きなアルベール様を傷つけた、最低最悪な人間。
 あんな女と許嫁になったのが、間違いだったのだ。

「駄目、かな……」

 これからは、わたしの時代だ。
 苦しくて、つらくて。
 どれほど悲しくても――ずっと耐え続けていて、本当によかった! 

「いいえ……! わたしはずっとアルベール様を、お慕いしておりました……! その申し出……っ。ありがたく、頂戴いたします……!」

 わたしは瞳から大粒の涙を流すと、差し出された彼の手を取った。
 ――アルベール様の心が今もなお、お姉さまに心を囚われているのだと……気づかぬまま……。
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