私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
「アルベール様と、一緒にいさせて……」

 マリンヌの口からは力なく、か細い声が紡がれる。
 彼女の四肢を掴んでいた騎士達は、その美しき声に聞き惚れているのだろう。
 戸惑いがちに、動きを止めた。

「彼はわたしの、生きる希望なんです。アルベール様がいないと……」
「惑わされるな。連れて行け」
「はっ」
「お、お願いです……! お願い、お願いだから……! 許して……!」

 騎士達が優先されるべきは、罪を犯した少女の願望ではなく上官の命令だ。
 それに逆らうものは、騎士を名乗る権利を剥奪される。

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 縦社会で生きる人達に何を言っても無駄だと、わかってはいたけれど。
 このまま妹が捕らえられたら、きっとよくない方向に彼女の心が歪むだろう。
 私はそれを防ぐために、どうにかこの子の願いを叶えて上げられないかと、口を挟んだがーー。
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