裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 ひとつ目は、彼女の父が倒れて救急搬送されたことを知らせるもの。これから緊急のオペになるという内容だ。ふたつ目は四時間後、命はとりとめたことと、入院先の病院が書かれていた。
 和葉の父、寺坂高弘は厳格な自分の父親と友人だというのが間違いじゃないかと思いくらい穏やかな人物だ。妻と共に遼一を息子のように可愛がってくれた。遼一は父親よりも彼の方を父親と思い慕っていた。
 恩人が倒れたという知らせに動揺し命は無事だという報告にとりあえず安堵した。そして大好きな父の急病に和葉がどれだけ悲しんでいるかと胸を痛めた。
 手術の間、そばにいてやりたかった。
 すぐに向かうとメッセージを入れ空港を出ようとした時、今度は自身の父親から話があるから本社へ来いというメッセージを受けった。
 本心では、一刻も早く和葉のもとへ行きたかったが、父親たちも友人同士、何かこと付けがあるのかと考え、病院へのルート上にある本社へ寄った。
 社長室では、父と当時常務だった福原が待っていた。そこで遼一は、和葉の父親に業務上横領の疑惑がかかっているという話を聞かされたのだ。
 NANAでは各取締役ごとに担当業務が振り分けられている。和葉の父は、経理部門を統括していた取締役で、社長である父が最も信頼している証だった。
 一週間前、NANAに置いて一億円の使途不明金が発覚し、その資金を動かしていた人物が和葉の父だという内部告発がなされたという。告発した人物は経理部門のナンバー2の石原という人物で、和葉の父の部下だった。
 内部告発を社長へ報告したのが福原で、だから彼も同席していたというわけだ。
 確かな証拠と証人が揃っているとふたりは言ったが、遼一はなにかの間違いだと思った。
 和葉の父は、実直を絵に描いたような人物だ。家族と仕事をなにより大切にしていた。名家の長男で資産家でもあるから、金が必要だったとは思えないし、なにより彼が父と会社を裏切るはずがない。
 けれどその遼一の主張は、福原の証拠の前には無力だった。
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