裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 そもそも父の意向に背きパイロットとしての道を選んだ遼一は、会社経営のことはまったく把握していなかった。そんな自分がなにを言っても無駄だったのだ。
『お前を呼んだのは意見を聞くためではない。今後の話をするためだ。会社としてこの件をうやむやにするつもりはない。寺坂は準備が整いしだい解任する。あいつの娘とお前の婚約も白紙だ。もう会うのも許さん』
 長年信頼していた友人に裏切られ父は怒り狂っていた。
 もちろん遼一は拒否した。親子であっても行動を制限する権利はない。
『会社のことに口は出せませんが、私はあなたの指図を受ける立場にありません』
 きっぱりと言い切ると、口を挟んだのは福原だった。
『ですが親子ですよ? どんな手段を使ってでも解任決議を止めようとするでしょう。社長の指示通りにされるのが賢明かと』
 口調は丁寧だったが、その内容は到底容認できるものではなかった。
『和葉は……寺坂副社長と、寺坂和葉さんは、そのような人物ではありません。私の交友関係に口を出さないでいただけますか』
 怒りで視界が真っ赤に染まるのを感じながら、押し殺した声で言い放つ。拳をにぎりしめ殴りそうになるのを堪える。
『だが、あいつは俺を裏切った!』
 父が机をバンッと叩いて激昂する。
『信頼していたのに、それを利用したんだ!』
 和葉の父は彼にとって、唯一の信頼できる友人であり右腕だ。だからこそその怒りは激しかった。
 胸が痛むが、だからといって了承するわけにいかない。そもそも、横領疑惑が、どう考えても不可解だった。経営にはタッチしていないが、本人の弁明をまったく聞かないで断罪するのは、あまりにもひどいやり方だ。
『とにかく諸所の手続きを終えたら、解任する』
『……そうですか。その決定に私は口出しできません。ですがそのことと私の個人的な付き合いは別です。私は寺坂家のおじさんおばさんには息子のように可愛がってもらいました。おじさんが横領なんてしないと信じてる。和葉とは結婚しますから、これからも今まで通り、いえ今まで以上に彼らを支えようと思います』
 キッパリと言い切ると、父が唸るような声を出した。
『許さん』
『父さんの許しはいりません。話がそれだけなら、私はここで失礼させていただきます。早く病院に行ってやりたい』
 そう言って踵を返す。出口へ向かって歩き出そうとする遼一を、福原が止めた。
『待ちなさい、話はそう単純じゃない。会社としては解任で済ますつもりはない。刑事告訴することになるだろう。君は犯罪者の身内になるんだぞ?』
 振り返り福原を睨む。
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