裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 沈黙する遼一に、歩美がため息をつく気配がした。
『べつにいいじゃない、結婚くらい。お互いいつかはしなきゃならないんだし』
 自分だってさほど興味はないと言いたげな口調だが、真意はわからなかった。
 今回も適当にかわそうと口を開き掛けて、待てよと思い直す。
 明日、例の男との話し合いがうまくいけば、材料は揃う。そしたら、あの内部告発の真相を暴くことができるのだ。
 その際に、必要な役者は父と福原。そこに自分をプラスした全員のスケジュールを同時に抑えるのは容易ではない。
「わかった。じゃあ設定しておいてくれるか。そうだな……再来週あたりだとありがたい」
『本当に? やっとその気になったのね。父も喜ぶわ』
 弾んだ声でそう言って歩美は電話は切った。
 内部告発の真相を暴きたいというのは、もともとは、恩人の濡れ衣を晴らし和葉の人生を憂いないものにするためだった。
 でも和葉と再会して、樹が自分の子だと知り、彼女を再び取り戻すと決意した時、それはさらに重要な意味を帯びた至上命題となったのだ。
 できなければ、和葉との未来もない。
 その戦いがようやく終わりに近づいている。
 成功すれば、彼らをこの手で幸せにできるのだ。
 すぐ近くで寝息を立てている大切なふたつの存在に思いを馳せ、遼一は口元に笑みが浮べた。

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